2020 Fiscal Year Research-status Report
WH演算子の特性とその内的併合に関する統語論的研究
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18K00553
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
北尾 泰幸 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90454313)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分裂文 / 凍結原理 / wh 移動 / 関係節 / 代入構造 / 付加構造 / 主要部上昇移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和 2 年度は、非項位置への wh 移動操作に関して、これまで中心的に考察してきた関係節の統語的移動から対象を広げ、分裂文(cleft sentences)の焦点句移動にまつわる wh 移動について分析した。特に英語の it 分裂文(it-clefts)を題材に、「凍結原理」(Freezing Principle)の観点から分裂文に含まれる wh 移動について分析し、その派生構造の解明を試みた。 一般的に、移動が適用された構成素が、その移動が牽引されるための条件を満たしたとき、その構成素から、さらなる要素の摘出は許されない。この統語的特性を規定したものが「凍結原理」である(Wexler and Culicover 1980, Rizzi 2006, 2010、他)。しかし興味深いことに、英語分裂文においては、焦点句が前置詞句(PP)の場合は凍結原理に従い、焦点句から wh 移動を適用することはできないが、焦点句が名詞句(DP, NP)の場合は、焦点句からの wh 移動が許される。つまり、凍結原理が駆動しないのである。 この凍結原理の誘発の有無は、PP 焦点句の分裂文は付加構造(adjunction structure)により派生されるのに対し、DP/NP 焦点句の分裂文は代入構造(substitution structure)により派生されるためであると結論づけ、その妥当性を再構築現象・連結性およびフェイズの観点から明らかにした。 本研究成果については、日本英語学会第 38 回大会で口頭発表するとともに、日本英語学会の学術雑誌 JELS 38 に論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和 2 年度は、これまでの関係節の分析から、英語分裂文の統語分析および凍結原理の検証へと研究対象が広がり、研究が新たな段階へと進んだことから、研究が順調に進んでいると判断してよいと考えている。応募が採択され、学会発表および論文の投稿ができたことも、その一つの証左としてよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
学会発表の折、聴衆の言語学者の方々から、様々な示唆とともに多岐にわたる質問をいただいた。そのご質問から研究上の課題が見つかったため、まずはその課題に取り組む必要がある。加えて、現行の生成文法理論であるミニマリスト・プログラム、およびラベル付けアルゴリズムの中で「凍結原理」の位置づけを明らかにする必要があると考えている。 今後は分裂文に限らず、wh 移動に関する統語現象を広く分析し、現行理論における「凍結原理」の理論モデルとその妥当性を探っていくと同時に、その分析を通して、本科研費の研究課題である WH 演算子の特性とその内的併合の仕組みを明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により出張できず、学会発表のための出張として計上していた旅費を使用しなかったため。
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Research Products
(3 results)