2018 Fiscal Year Research-status Report
名詞句の飽和性と意味機能との相互関係についての理論的・実証的研究
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18K00558
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
西川 賢哉 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, プロジェクト非常勤研究員 (50780516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 佑司 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 名誉教授 (90051747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 名詞句 / 飽和性 / 意味機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
名詞には、それ単独で外延を決定できるタイプの飽和名詞(「作家」「俳優」等)と、意味のうちに「Xの」というパラメータを含み、それが定まらない限り、外延を決定できないタイプの非飽和名詞(「作者」「主役」等)の二つが区別される。名詞句の研究にとっては、この飽和性という観点とは独立に、名詞句の文中での意味機能(対象を指示するか、属性を表すか、命題関数を表すか)という観点が重要である。本研究では、《飽和性》と《文中での意味機能》という二つの観点が文法の深いレベルで相互作用していることに着目し、名詞句を中心とする言語現象を有機的に記述・説明できる一般理論の構築を目指す。 平成30年度は、以下の内容を実施した。[1] 一般言語理論(生成文法)において、《名詞句の文中での意味機能》が、どの部門でどのように扱われるべきか、その理論的位置づけを考察した。[2] 「非飽和名詞」と、先行研究において提案されている類似概念(「中核名詞句」「関数名詞句」)との、概念上の異同を検討した。[3] 《飽和性》と《文中での意味機能》との相互作用が見られる構文として、「地図をたよりに人をたずねる」タイプの構文をとりあげ、同構文の特徴・制約を検討した。[4] 特定の述語によらない、純粋に《名詞句の文中での意味機能》の違いに起因する曖昧性を持つ文として、いわゆるウナギ文「AはCだ」、および「Aは難しい/簡単だ」タイプの構文を取り上げ、その意味構造を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
名詞句の《飽和性》および《文中での意味機能》の考察を通じて、理論的に興味深いデータをいくつか得られた。これらのデータに基づき、現行の理論では説明できないことは何か、理論はどのように改定されるべきかについて考察を深めることができた。また、これらの概念の理論的基盤をより明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の課題を継続するとともに、《飽和性》と《文中での意味機能》の相互作用という点から以下の構文を再検討する:「NP1のNP2」・コピュラ文(措定文・指定文)・ウナギ文。さらに、文の意味表示(論理形式)における《意味機能》の位置づけをより明確にする。研究成果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、資料収集に重点を置いたため、出張旅費の支出がなかった。来年度は、国内外の学会出張費も支出する予定である。
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