2020 Fiscal Year Research-status Report
ミニマリスト・プログラムの概念的基盤の科学哲学的研究:理想化、因果性、実在の分析
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18K00562
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 雅信 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 名誉教授 (30133797)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ構造言語学 / 革命 / 生物言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 昨年度行った, 1950年代に生成文法/生物言語学が形成された時の初期理論の歴史的・科学哲学的背景の研究を発展させ,生成文法/生物言語学と同じように科学としての言語学を標榜していたアメリカ構造言語学がどのような方法論的特徴を持ち,科学としての言語学である生成文法の発展にどのような貢献をしたかを分析した. その結果,科学革命において近代科学が成立する時に起こったと言われている概念的変化に対応する概念的変化の一部―アリストテレスの質的説明(オカルト的説明)から機械論的説明への転換―に相当する変化がアメリカ構造言語学でも起こっていることを科学史の分野の研究成果に基づいて比較と分析を行うことによって明らかにすることができた. この結果が示しているのはこれまでNewmeyer (1986), Freidin (2013, 2020)などが主張してきたChomsky (1957)が言語学に革命的な変化を起こし,全く新しい言語の科学として生成文法/生物言語学が誕生したという見解とは異なる言語科学の形成についての見解である.すなわち, アメリカ構造言語学は言語学の科学が形成される過程の一部を担っており, 科学としての言語学である生成文法/生物言語学の形成過程との連続性があり,アメリカ構造言語学から生成文法/生成文法への発展は非連続的なものではないことが示されたということである.またこの結果は科学史・科学哲学の研究成果を用いて言語科学の発展の特徴を明らかにすることができるということを示す一つの事例研究ともなっている.この研究成果は,「アメリカ構造言語学の科学としての性質の再評価について」(研究ノート, 査読無)としてまとめて, 『国際広報メディア・観光学ジャーナル』33号に投稿中であり、2021年度中に出版される予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
メカニズムの哲学の枠組みでの研究を中断して,生成文法/生物言語学以前のアメリカ構造言語学にまでもどってその近代科学としての特質を探る試みをしたため,当初予定していた研究ができなかったが,アメリカ構造言語学まで立ち戻ることで今後の研究の方向がより明確になり,今後の研究のテーマと進め方も明確になった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 科学史・科学哲学の概念を用いて,生成文法/生物言語学の初期理論,標準理論、統率・束縛理論,ミニマリスト・プログラムのそれぞれの段階の文法理論の性質を明らかにするのと同時に,主にメカニズムの哲学の観点から理論を構成する概念がどのように変化していったのかその発展の過程の特徴について理想化,因果性,実在をキー概念としながら分析する.
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Causes of Carryover |
研究計画を1年延長したため. 物品費, 人件費, その他として使用する予定.
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