2019 Fiscal Year Research-status Report
自然談話構造理解のための、音声・変異動態に基づいた談話標識の研究
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18K00564
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
甲田 直美 東北大学, 文学研究科, 教授 (40303763)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 発話位置 / 談話標識 / 末尾辞 / フィラー |
Outline of Annual Research Achievements |
日常会話における接続詞の使用実態について、話者交替上の基本単位であるターン構成単位をもとに一発話を捉え、そこにおける接続詞の位置と機能の関係を探った。接続詞はターン構成単位の①冒頭、②途中、③末尾、④単独、⑤相手の発話途中での割り込みの部分に位置していた。ターン冒頭における接続詞は、相手発話への反応や、談話境界の開始に用いられていた。ターン途中では、意味関係を明示するというよりも言葉探しの穴埋めに用いられていた。ターン末尾では述語末や終助詞などの文法的完了点を過ぎて接続詞が配置されるが、このときの韻律的特徴と意味機能の対応を分析した。会話での接続詞は前後件の関係を明示するというよりも、さまざまな位置において用いられ、談話標識やフィラー、末尾辞のように用いられていた。 地域に特定した事例研究として、気仙沼方言会話における接続詞の分析を通して、接続詞が相手の発話への同意や辞去の挨拶など、生活のコミュニケーション場面において重要な役割を果たしていることをみてきた。気仙沼方言において共通語にみられない用法を指摘し、ダカラ類が前後件を伴わず単独で用いられ、同意表現として機能することや、ソレデ類が会話での受け渡しに用いられ、相手の発話に融合的視点で関連付ける用法や辞去の挨拶としての用法を考察した。これらは会話において接続詞がその表現効果を発揮した事例である。 接続詞が用いられた文脈や音声特徴の分析により、音調や引き延ばしの長さによって接続詞が話者の感情を巧みに伝えているという、情意の接続詞としての用法をみた。このような事例では接続詞は感動詞化している。接続詞が元来持つ、前後件の関係を表すという機能が、相手の発話に同意したり、自らの視点の採り方を位置づけたりすることに用いられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接続詞の全体像について、包括的に論ずることができた。音声情報については今後も詳細な考察を続けていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
地域別、位相別について全体的に言語動態を記述する。歴史的変移も考慮しながら考察をすすめる。
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Causes of Carryover |
図書の購入を希望していたが勤務先の研究費でまかなえたため、次年度使用額が生じた。翌年度は出張も予定しているので研究が遂行可能である。
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Research Products
(3 results)