2019 Fiscal Year Research-status Report
Strategies in ambiguity resolution: a cross-linguistic perspective on the role of prosody
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18K00566
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小泉 有紀子 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (40551536)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語学 / 心理言語学 / 文処理 / 英語学習者 / スペイン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度のデータ収集で得られた成果を発表する年度となった。H31/R2年度の実績は以下の通りである。 1.スペイン語における研究成果の発表とネットワーク構築:否定と作用域の多義構造(e.g. Julia no compro la blusa blanca porque es/fuera de seda) について行った、文完成課題と産出課題の分析結果を、スペインの心理言語学国際ワークショップにて発表し、今後の読み実験と視線計測実験の具体的な計画を推進した。特に、スペイン語における否定の概念とその処理に関する研究発表を通して、文献研究の活路が開けたこと、接続法に関するディスカッションができたこと、今回新たなネットワークが構築でき、サラゴサ大学やマドリッド自治大学などの、カスティーリャ語のモノリンガルデータを取ることができる見込みが立ったことが成果となった。 2.英語初中級学習者向けにとくに構築した文処理実験の結果を分析して、英語学習者の達成度別に、読み実験の結果にどのような違いがあるのかを学会発表し、有益なフィードバックを得た。
3つの異なる言語における、同種の作用域多義構造の処理について探求する本研究課題の目的は、 人が言語を理解し、産出するメカニズムには、言語によってどのような類似性や多様性があるのかを解明することである。日本語、英語、スペイン語という異なる言語を同じプロジェクトの中で比較しながら、人の言語処理方略の普遍性や多様性を探求する、また外国語学習にも役立てるという大きな目標に向けて、歩みを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由は2つである。まず、スペイン語と英語学習者の研究のまとめと発表では一定の成果が上がったが、さらに次のステップへ進めるための国際共同研究の打ち合わせができなかったことがある。 また、日本語の作用域構造の実験においては、実験データの収集が不十分で、成果の公開には至らなかったことである。1. 日本語における否定と副詞類の作用域の関係:「真理子は 鈴木さんのように 頭が良くない」の例は、否定と形容詞句「鈴木さんのように」の作用域の相互作用により「鈴木さんも真理子も頭が良くない」という解釈と、「鈴木さんは頭がいいが真理子はそうではない」という解釈が可能である。母語話者の直感では、形容詞句「鈴木さんのように」の前や、述語「頭が良く」の前に韻律境界があるかどうかによって好まれる解釈が変わるとみられる。当初の予定通り、この 構文について、日本語母語話者を対象に一般的な解釈の傾向を調べた。また、この構文を文脈の中でどちらか一方の読みにしかならないようにし、読み上げ実験も行なった。結果としては、読み上げ実験の初期分析では2つの読みの間で「ように」句のあとの韻律境界の有無に違いがみられる傾向がわかったものの、1番目の、一般的な解釈の傾向を調べる実験では、実験文の意味的なバイアスを十分にコントロールできたとはいえなかった。意義のある研究結果としてまとめるにはさらなるデータ収集が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、日本語のデータ収集(基礎データ収集の実験文見直しと韻律分析)をさらに推進し、研究結果をまとめたい。また、スペイン語の研究については、母語話者の被験者を多く獲得できるスペインへの渡航のタイミングをはかりながら、否定と副詞節の作用域多義構造に関するスペイン語学の文献を研究し、スペイン語の接続法が副詞節で使われた場合に多義性が解消されるという現象についての分析を深めたい。そうすることで、のちの読み実験、視線計測実験へと繋げることができる。また、英語学習者の実験結果についても、学会発表の内容をより深めて研究論文として発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年3月に、研究打ち合わせとデータ収集のためにスペインへの出張を計画していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため渡航が不可能になったため。 今年度、事態の収束を待ち旅行が可能になった時点で、再び出張を計画したいと考えている。
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