2018 Fiscal Year Research-status Report
日本語と英語における語種と複合語の関係から見た借用の一般理論
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18K00575
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 忍 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 教授 (20294176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 語種 / 名づけ / 複合語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、日本語の和語単純動詞と和語複合動詞、漢語動詞が表すことのできる意味について、Talmyの移動動詞の類型論的一般化に基づき分析を行った。その結果、和語単純動詞には原則として<様態>と<経路/結果>が同時に含まれることがないのに対し、複合動詞はそれらの両方が(それぞれ前項動詞と後項動詞として)含まれうることを示した。また、2つの出来事が継起する事象(小林2004においては「対立関係」と呼ばれる)については複合動詞で表すことができず、<複合動詞連用形+する>の形式、ないし、漢語動詞で表されることを指摘した。ここでは、和語と漢語という単純な二分法ではなく、和語の中でも単純語と複合語では性質が異なっており、後者は漢語と同様の性質を持つことがわかる。このことは、今井(2013)やPanocova(2015)でも指摘されているように、語形成と借用が名づけという点で同列に位置づけられることから説明できると主張した。また、英語についても、句動詞におけるロマンス系の語彙の不生起が日本語の語彙的複合動詞における漢語の不生起と平行的に捉えられると述べ、両言語における語種に関わる現象の共通性を示唆した。 この研究成果については、2018年10月17日に開催された国際シンポジウム「グローバル化時代の日本語教育と日本研究」(於ハノイ大学、ベトナム)における研究発表として公表され、同シンポジウムの紀要に研究論文「動詞の語種とそれが生起する構文-意味論的分析-」として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初目的としていた、和語複合語と漢語、外来語の形態統語的な性質の違いを示すようなデータが十分に収集できなかった点でやや遅れているが、先行研究のレビューと理論的な分析の背景となる文献の収集は完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度(平成31年度)は、前年度に十分に行うことができなかった日本語のデータ収集と分析を行うとともに、英語の分析を行う予定である。英語については、特に句動詞と語種の関係を中心に考察し、日本語の複合動詞との比較に基づいて、二つの言語を通した一般化を目指す。また、令和元年度中に学会発表を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究においては英語の句動詞が対象となる。従って、当該分野の研究者に研究分担者ないし研究協力者として参加を依頼することとし、平成30年度分の使用予定を見直し文献購入費、出張旅費を抑制した。次年度使用額については、令和元年度の研究分担者の文献購入費及び出張旅費に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)