2018 Fiscal Year Research-status Report
拘束的モダリティ形式の使用と不快さの関連性に関する対照研究
Project/Area Number |
18K00584
|
Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
平 香織 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (40389614)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 拘束的モダリティ / 朝鮮語 / 対照研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,(i)年齢や上下関係による言語の使用制限が厳しい朝鮮語において,なぜ下位者が上位者に対して拘束的モダリティ形式を使用できるのか,(ii)朝鮮語と同様に敬語を有し,対人配慮を行う日本語や他のアジア言語においても同様の使用が観察されるのか,(iii)各言語においてどの種の行為に対する強制や制限が人を不快にさせるのかを明らかにすることを目的とする。 本年度は,朝鮮語の拘束的モダリティ形式のうち,-ya toyta/-ya hata(日本語の「なければならない」に相当)に焦点を当て,次の3点について考察した。 1) 聞き手に行為を要求する際に-ya toyta/-ya hataが使用された例を収集し,話し手・聞き手の利益・不利益の観点から状況別に分類した。そして,類似した状況で日本語ではどのような形式が使用されるかを示し,違いを指摘した。2) 広告文・案内文を対象とし,読み手にある行為を促す際に使用される-ya hataの特徴を観察した。そして同様の行為を促す際に日本語ではどのような表現を使用するのか,また広告文・案内文で「なければならない」がどのような場合に使用されるのかを考察した。3) -ya toyta/-ya hataと-ci anuhumyen an toytaを取り上げ,他の文法形式との共起関係から,二つの形式の違いについて考察した。 1)については学会で発表し,2),3)については論文投稿中である。 上記のほか,朝鮮語の新聞記事のうち日本語訳があるものを収集し,当該形式の検索が容易になるよう環境を整えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
書きことば・話しことばの両面から朝鮮語の-ya toyta/-ya hataの特徴を記述し,日本語の「なければならない」と対照することで,両形式の使用に関する違いが明らかになりつつある。中心となる考察が順調に進んでいるため,他の拘束的モダリティ形式についても同様の方法で進めていくことができ,さらに,他のアジア言語を考察する際の基盤が固まりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画2年目は,以下の2点を中心に取り組む。 1)-ya toyta/-ya hata以外の拘束的モダリティ形式の使用に関する記述とそれに相応する日本語の形式との対照研究を行う。 2)他のアジア言語において,聞き手に行為を促す際に当為表現が使用されるか,使用されるとすれば,当為表現を使用した場合に聞き手に不快感を与えるかどうかを観察するための準備を進める。
|
Causes of Carryover |
予定していたパラレルコーパスの資料の購入が遅れている。その理由は電子媒体の言語資料を使用した考察を中心に行ったためである。速やかに入手可能なパラレルコーパス資料を購入し,電子化作業を進める。
|