2018 Fiscal Year Research-status Report
Cotribution of Classical Arabic Grammar to Modern Linguistics
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18K00585
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
榮谷 温子 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 講師(非常勤) (30376826)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アラビア語 / 古典文法学 / 限定・非限定 / 言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラビア語の限定名詞句の中でも人称代名詞に焦点を絞り、「事柄の代名詞」と呼ばれる人称代名詞に関する研究を進めることができた。 9月に英国のケンブリッジ大学にて開催された The Foundations of Arabic Linguistics の第5回の会議に参加し、参加者たちの研究発表を聴くとともに、自らもコーランにおける「事柄の代名詞」に関する研究発表(題目:"On interpretation of the pronoun huwa in 112:1 of the Qur'aan: Tafsiir and Grammar")を行ない、参加者たちから有益なコメントを得ることができた。さらに、10月に京都大学で行なわれた日本オリエント学会の第60回年次大会でも、「事柄の代名詞」に関して、上述の研究を補足する内容の研究発表(題目:「クルアーン18章38節と34章27節の「事柄の代名詞」について」)を行なった。これらの口頭発表をもとに、2019年度は「事柄の代名詞」に関する論文をまとめ、The Foundations of Arabic Linguistics の会議録への掲載を目指す。 さらに、2020年に The Foundations of Arabic Linguistics の第6回会議を東京で開催する予定であるが、その打ち合わせも行なった。 8月には、モロッコのムハンマド5世大学で行なわれた、世界アフリカ言語学会議に参加し、アラビア語の能動分詞に関する研究発表(題目:"Contrastive Analysis of bgha in Moroccan Arabic and Caaz/'aHabb in Egyptian Arabic")を行ない、また、アラビア語やそれ以外の諸言語に関する研究発表を聴き、アラビア語学研究および言語学研究への知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アラビア語の限定名詞句のうち、人称代名詞については、従来あまり言及されてこなかった、あるいは誤解されてきた「事柄の代名詞」の分析を深く行なうことができたが、その他の範疇である、固有名詞、指示詞、関係詞、定冠詞を伴う名詞、またイダーファと呼ばれる複合形に関しては、K. Versteegh ed. (2019) の The Foundations of Arabic Linguistics IV に掲載された論文において、アラビア語の限定について総合的な考察は行なったものの、限定名詞句の各範疇についての個々の分析が不足していると自覚される。 さらに、本研究課題の目的のひとつが、アラビア語古典文法学の現代言語学への貢献である。古典文法学の調査だけに終わらず、その成果を現代言語学の諸理論へ応用していくことが重要である。この点も、上記論文において、アラビア語古典文法で形式面から定められた「限定の度合い」が、認知言語学の観点からも有効であることを明らかにしたが、これ以外にも分析を進めるべき項目は多々あり、残念ながら、計画よりもやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2019年度は、アラビア語の「事柄の代名詞」についての、2018年度の口頭発表2件を踏まえ、論文を執筆し、The Foundations of Arabic Linguistics V の会議録への掲載を目指す。 次いで、主に関係詞と指示詞を中心に、アラビア語限定名詞句の調査・分析を、古典文法学の立場から行なう。関係詞と指示詞は、古典文法学ではかつて合わせて「曖昧な名詞」と呼ばれていた、互いに関係の深い範疇である。この2つを包括的に扱うことにより、限定名詞句の全体像の把握を試みる。 また、日本人研究者、特にアラブ研究の草分け世代のアラビア語文法研究論文の収集も本格的に開始したい。当時の研究者は、一次資料にアクセスして論を展開していることが多く、本研究にも資するところがあるものと考えられる。 さらに、来年度に迫った、the Foundations of Arabic Linguistics 第6回会議の準備も並行して進める。同会議は2020年度9月に、慶應義塾大学(三田キャンパス)での開催を予定しており、基調講演者への打診、発表要旨の募集、会場の予約等を行なっていく。
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Causes of Carryover |
2019年3月にカタール大学で行なわれた、アラビア語教科書作成に関するワークショップに参加するため、航空券代として研究費を残しておいたところ、直前になって、カタール大学から旅費(航空券代と滞在費)を支給していただけることがわかり、科研費から旅費を出せなくなってしまった。そのため、次年度へ繰り越すこととなった。 2019年度は、英文論文執筆の際の英文校閲、国内学会への参加、エジプトやカタールでの調査や研究者との打ち合わせ、必要な文献の購入などに助成金を使用していく予定である。
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Research Products
(3 results)