2018 Fiscal Year Research-status Report
Formation of the writing language of modern mongolian
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18K00586
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
呼和巴特爾 バートル 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (80338540)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 現代モンゴル語 / 言文一致 / 文字改革 / キリル文字 / Ts.Damdinsuren |
Outline of Annual Research Achievements |
まず研究計画通りに、モンゴル国が1941年に導入した「新文字」(キリル文字)による「文字改革」の背景を「言文一致」の視点から考察した。 20世紀初期に、モンゴル語文語とモンゴル語口語にどれほど差異が生じていたのか、それを世界のモンゴル語研究の代表的な学者たちのことばによって証言し、次いで、モンゴル語の「言文一致」を実現させることにより現代モンゴル語の形成に重要な役割を果たしたと考えられるモンゴル国の著名な作家、学者ツェ.ダムディンスレンの論説や活動を歴史社会言語学の視点から考察した。 次に、1950年代に言語学顧問として北京にいたソ連のG.Pセルジュチェンコ(Serdyuchenko)が内モンゴルの標準語について述べた貴重な資料を中国の公文書館で見つけ、1950年代のモンゴル人民共和国と中国の内モンゴル自治区などのモンゴル語の関係について考察した。 セルジュチェンコは1954年10月から1957年7月まで中国社会科学院と中央民族学院に勤めていた際、漢語「標準語」論について述べ、それにともない、内モンゴルのモンゴル語標準語がどうあるべきについて述べていた。具体的には、モンゴル人民共和国が標準語の基礎方言をハルハ方言にしたことを参考に、内モンゴルもハルハ方言にするのが一つの選択であるが、方言調査の結果によるべきだとアドバイスした。セルジュチェンコのこのアドバイスに対し、内モンゴル当局側がそれを受けいれる方針であったという、これまで知られていなかった内モンゴルの言語政策にかかわる重要な問題について分析し、その内容を東京で行われた「国際モンゴル学会アジア大会」で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代モンゴル語書きことばの形成について、「言文一致」の視点からの考察を続け、MongGul kelen-U sudulal-un durasGaltu biCig-Ud (6冊、内モンゴル文化出版社 2015年)に収録されたモンゴル言語文字研究の文献資料を分析し、これまでの研究内容を充実させ、2019年5月25日に予定されている「言文一致科研」講演会(東京大学駒場)で「モンゴル語にとっての言文一致の問題と現代モンゴル語の形成」という題で研究報告を行う準備をしているほか、現代モンゴル語の形成にとって重要な資料となるモンゴル語定期刊行物の研究を続けている。 これについては、1895-97 年に帝政ロシア領チタ市で発行された初めてのモンゴル語新聞であるOrus doruna-yin kijaGar-un aju tOrUl kemegdekU sonin-tu biCig について、ブリヤート国立大学Badagarov Jargal准教授の最近の研究を踏まえ、その語彙を1908年に吉林で創刊された初めてのモンゴル語雑誌 MonGul UsUg-Un Bodural(蒙話報)と1909年にハルビンで創刊されたモンゴル語定期刊行物 MonGul-un sonin biCig の語彙と比較することにより、ロシア帝国領内のモンゴル語と清朝領内のモンゴル語語彙の近代的語彙の概念に関する相違性について考察している。例えば、ロシア領内のモンゴル語のSasin (サンスクリット語から)は英語のreligionの概念を含んでいたが、清朝領内のモンゴル語のSasinはそうではなく、漢語の「法度」の意味で使われていた。
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Strategy for Future Research Activity |
現代モンゴル語書きことばの形成にとって重要な意味をもつ近代語彙の発展について、まず、1930年にブリヤート・モンゴル学術文化院から出版された『ロシア語モンゴル語術語辞典』、そして、1942年にモンゴル科学アカデミーにより出版された『ロシア語モンゴル語辞典』及び、1955年に内モンゴル人民出版社から出された『漢蒙簡略辞典』についてそれぞれ分析を行ったうえで特定の近代語彙について比較をすることにより、これまでのモンゴル語近代語彙の研究を深める。
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Causes of Carryover |
2018年度はロシア連邦ブリヤート共和国で資料調査をする予定であったが、日程の都合上果たせなかった。2019年度は9月に行く予定である。 また、進めるべき作業が進められず「謝金」が使用されなかった。2019年度はデータ入力作業と現地調査で「謝金」が多く発生する予定である。
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Research Products
(5 results)