2019 Fiscal Year Research-status Report
Formation of the writing language of modern mongolian
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18K00586
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
呼和巴特爾 バートル 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (80338540)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 言文一致 / 近代語彙 / 言語政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、現代モンゴル語書きことばの形成にとってもっとも重要な要素となる「言文一致」の問題については、伝統的なモンゴル文字を使用しながらモンゴル語の古典的な部分である格助詞や時制語尾を現代語の形で表記し、モンゴル文字を綴り通りにではなく、現代語の発音通りに読むことを学校教育に導入した内モンゴルの研究者チンゲルタイの研究について口頭発表し、内モンゴルにおける現代モンゴル語書きことばの成立におけるチンゲルタイの「現代モンゴル語」研究の位置づけと重要性を明らかにした。モンゴル語近代語彙形成の考察としては、引き続き20世紀前半発行モンゴル語定期刊行物の資料的価値に注目することに重点を置き、日本軍占領時代の「蒙疆政府」発行モンゴル語雑誌の新語の分析及び満洲国で出版されたモンゴル語雑誌の発掘と内容紹介をしたほか、特定の語彙についてその歴史的、政治的意味の考察に焦点を当てて論述した。そのほか、中国領内、とりわけ内モンゴルにおける「文学語」としての現代の書きことばの成立にかかわる重要な資料について、それまでの口頭発表をもとに分析を続け、研究の成果を論文として公表した。本研究は、現代モンゴル語書きことばの成立について歴史的時代背景の考察と言語政策という政治の視点からのアプローチで、現代モンゴル語書きことばの形成過程を研究するうえで欠かせない手法であったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代モンゴル語書きことばの形成にとって、「言文一致」の問題はもっとも重要な要素の一つで、2018年度はこの問題について、伝統的なモンゴル文字をキリル文字に変えることによりモンゴル語の新しい書きことばの形成に大きく貢献したモンゴル国の著名な学者Ts.ダムディンスレンの文字改革をめぐってモンゴル国で論文発表をしたが、2019年度はそれを踏まえ、内モンゴルにおけるモンゴル語の「言文一致」に貢献した内モンゴルの学者チンゲルタイの著作について口頭で発表した。 また、現代モンゴル語書きことばの形成にとってもう一つの重要な要素となる「近代語彙」について、日本軍支配下の「蒙疆聯合自治政府」(1939-45)のもとで発行された貴重なモンゴル語新聞に掲載された新語集の語彙について考察し、モンゴル語近代語彙成立のプロセスを知る上で研究が不十分であった「蒙疆聯合自治政府」のモンゴル語近代語彙の研究を充実させることができた。 さらに、言語政策の視点からは、1950年代中ころ中国に言語学顧問として勤務していたソ連の著名な言語学者G.Pセルヂユチェンコが内モンゴルの「文学語」(現代の書きことば)の成立について行ったアドバイスである「機密資料」を分析し、これまでの口頭発表をベースに公開出版するすることができた。これは、理論的に、また、言語政策の視点から当時のモンゴル人民共和国のモンゴル語及び中国の普通話(標準語)と内モンゴルのモンゴル語書きことばとの関係を考察する上で欠かせない内容であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現代モンゴル語書きことばの形成にとって重要な意味をもつ近代語彙の発展について、まず、1955年に内モンゴル人民出版社から出された『漢蒙簡略辞典』の研究から着手し、次いで、1930年にブリヤート・モンゴル学術文化院から出版された『ロシア語モンゴル語術語辞典』、そして、1942年にモンゴル科学アカデミーにより出版された『ロシア語モンゴル語辞典』についてそれぞれ分析を行ったうえで特定の近代語彙について比較をすることにより、これまでのモンゴル語近代語彙の研究を深める。また、現代モンゴル語書きことばの形成にとってもっとも重要な文献資料となるモンゴル語定期刊行物の調査研究にけじめをつけ、カタログの出版を目指す。本研究の理論面においては、引き続き、モンゴル民族の国民国家の形成過程及び社会主義民族理論や政策の実施過程を、現代モンゴル語書きことば形成の歴史的、社会的背景とし、諸文献資料に基づき考察を続ける。
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Research Products
(5 results)