2019 Fiscal Year Research-status Report
対話性と響鳴に基づく伝達言語の発話構築と認知のメカニズム:認知語用論的研究
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18K00593
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
崎田 智子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (10329956)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知 / 対話性 / 発話構築 / 響鳴 / 伝達 / 認知語用論 / 対話統語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、対話統語論、伝達理論、認知言語学の知見に基づいて、日常言語の自然な発話間に潜む響鳴を明示的にマッピングすることにより、様々な発話が響鳴を通して構築されるプロセスとその認知的背景を解明することを目的としてきた。 日常コミュニケーションにおける多様な伝達パターンを探究する中で、本年度は、スタンス(Du Bois 2007)と間主観性に焦点を当てることで複雑な表層パターンに対して統一的視座から説明を試みた。特に、対話におけるスタンスとりの重要性に基づいて、話者それぞれが事象評価、自己の位置付け、他者との提携、を同時に行うことでスタンスを微妙に調整しながらコミュニケーションを行うメカニズムを探究した。 この中で、フィールドワークのデータ内に顕著に見られた、談話ストラテジーとして日常対話で多用される譲歩構文において、他者肯定・否定を文中に混在させて話者間折衝を行う際のスタンスとりの重要な機能に着目してデータ分析を進めた。特に以下の点を行った。(1)日常対話における譲歩構文の基本構造と多様なパターンの分析。(2)譲歩構文に付随する談話標識、接続詞、多様な肯定表現、条件節等の分析。(3)スタンス間調整に関わるスタンス標識の分析。(4)譲歩構文の先行発話との構造上のマッピング。 以上の点を考慮に入れながら、さらに対話における譲歩構文を新旧情報処理および認知的前景化・背景化、際立ちの観点からも検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度2月から予定していた海外出張がコロナウイルス関連でキャンセルになり、また、参加予定の学会や研究会がキャンセルになるなどしたため、終盤に進捗が滞った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、伝達言語の発話構築メカニズムを解明するため、英語・日本語における自然言語データを収集し談話分析・定量分析する手法で進めている。コロナの影響でフィールドワークの見通しが立たないため、さしあたって、これまでに収集した日常言語データの分析を進めるとともに、corpus等での補充を図る。ダイアグラフにマッピングするとともに、さらに対話の展開、スタンス、提携を可視化し、発話構築を説明するためのモデル構築を試みる。また、学会中止による研究発表キャンセル分については、形を変えて意見交換およびフィードバックを得るようにする。
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Causes of Carryover |
コロナ蔓延のために海外旅費を一部支出しなかった。また、当初予定していた学会参加を中止したため、当初予定額より抑えて執行した。これらの分を次年度以降に延期して執行する予定である。
次年度、米国研究協力校の状況に応じてフィールドワークを再開、および研究打ち合せ等を入れる予定である。また、研究成果発表も予定している。データ分析に必要なソフト等を購入する。
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Research Products
(1 results)
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[Book] 認知言語学 Ⅰ2020
Author(s)
池上 嘉彦、山梨 正明
Total Pages
420
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4-89476-670-9