2018 Fiscal Year Research-status Report
注釈・論議資料の用字法と文章構造に着目した仏教漢文書記史の研究
Project/Area Number |
18K00607
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40390257)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 日本語表記史 / 日本語書記史 / 日本語文体史 / 変体漢文 / 和化漢文 / 漢字片仮名交じり文 / 仏教漢文 / 談義聞書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平安時代後期から鎌倉時代における日本撰述の仏教漢文の文体特徴の解明である。当該期の仏家の学問活動における漢文書記の実態、すなわち仏家における書記言語と書記様式の相関の整理を行い、仏教漢文内部にみられる文体の位相を明らかにする。 平成30年度は、本研究課題開始以前より継続的に調査研究を行っている高山寺蔵『打聞集』の原本調査研究を中心に進めた。全三帖中、第一帖のデータ入力は一応の完成をみた。今後翻字本文の整備および第二帖以降の本文データ整備を進める。また、データ整備と平行して、談義の記録(聞書)としての本資料の性格を明らかにする論考をまとめた(現在編集中)。和化漢文体と漢字片仮名交じり文体とが混淆的様相を見せる『打聞集』中、とくに第三帖に多く認められる片仮名表記自立語の全例を示した上で、以下の点を指摘した。①本資料は特定の人物が関わる談義の記録としての一貫性を持つ一方で、各段義の内容によって教釈的文脈と説話的文脈とが混在するテキストであり、仮名表記自立語の多くは説話的文脈に現れている。②仮名表記自立語には、口語的な要素としての音便・係り結び、和文語的な呼応、口語・和文語的な語の使用が認められる。用例数が僅少ではあるものの、こうした諸要素は談義の場における言語の実態の表出である可能性がある。③以上のことと関わって、教釈的文脈は和化漢文的要素を持つ漢字文の表記様式、説話的文脈は漢字片仮名交じり文の表記様式というように、文章内容と表記様式・文体とが関連づく文体的位相性を内包するテキストを形成している。 この他、和化漢文表記史研究の課題を考察し、語と漢字表記との密接な結びつきを前提としない方法論を提案する研究発表を行った。本研究課題の分析単位の一つである助字と日本語との対応の検討が主要なテーマとなっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、原本調査研究、および学会発表等の成果発表について、家族の健康に関する不測の事態が生じたため、当初の予定通り研究を進捗させることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
原本調査研究については、2019年度の調査予定を増やすこととする。また成果発表については、口頭発表・論文発表に至らなかった成果をまとめることとする。以上の内容を2019年度の当初予定に加えることによって、研究の進捗に努める。
|
Causes of Carryover |
家族の健康に関わる不測の事態により、当初計画した原本調査、および口頭発表を実施することができなかった。次年度使用額分は主としてこの研究計画に関わる旅費である。今年度未使用額に関わる研究内容は、次年度の研究計画に加えて、より優先的に実施することとする。
|
Research Products
(2 results)