2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00622
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
山本 真吾 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70210531)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太平記 / 漢語 / 米沢本 / 禅用語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、室町時代初期言語の示準文献と目される『太平記』について、日本語史研究に資する文献学的性格づけの基礎を固めるために、前年度に着手した米沢本(市立米沢図書館所蔵、室町時代末期写、米沢善本198)の実地原本調査を継続して行った。前年度には、すでに書写者の筆跡という観点から、複数の手になる書写者の巻ごとの担当箇所まで推定し得たが、これをさらに客観的に検証するために、特定の漢字、片仮名の字体、音韻現象といった言語現象に着目し、これと書写者との間に相関性が認められることが解明された。40冊にものぼる大部なテキストであるので、このデータを補正することが求められる。さらに音韻現象以外の、仮名遣いや文法現象などとの相関性の有無についても調査する意義が認められ、継続して原本調査を推進する必要のあることが確認された。 この『太平記』について、特に漢語に着目し、前代の『平家物語』との比較を行った成果を西安外国語大学(中華人民共和国、第11回中日対照言語学シンポジウム)で口頭発表し、禅用語受容の視点から檀国大学校(大韓民国)の知識人文学交際国際学術大会・口訣学会国際学術大会で発表(新型コロナウイルス感染拡大防止のため、書類発表となる)を行った。前者は、漢語受容の面から、『平家物語』とは異なった側面を明らかにした。後者は、禅思想の影響を強く受けながらも漢語語彙という点ではそれほど多く受容されているとは言えない事実を指摘した。 この他、前年度から、中世口語を相対的に測定するために、中世文語規範の指標となる、平安時代訓点資料語彙の基礎データの収集・整理も行っているが、これはなお継続中である。さらに高山寺、石山寺等の畿内寺院の中世文献の原本調査を実地に行い、言語データの蓄積を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、南北朝・室町時代初中期の口語の解明にあるが、その第一段階として、これと対峙する文語の解明、口語資料の文献批判が必須であり、この成果を学会発表で問うことによりさらに精度を高めることが可能となる。 このいずれの活動も着実に推進できているという実績に照らせば、現在までの進捗状況としては、予定どおり原本調査や学術発表の機会が得られ、おおむね順調に進めることができていると判断してよい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス完成拡大防止のため、外出自粛や公共機関の閉鎖が行われ、今後の推進に強い懸念を抱いている。実地の原本調査や学術会議において発表が中止を余儀なくされた場合の対応策として、これらを翌年度に移行させつつ、机上でできる作業を先行させることを計画している。具体的には、文語語彙基礎データ入力、『太平記』口語語彙のデータ収集、『太平記』諸本の異同調査といった作業をアルバイトに担当してもらい、推進したい。
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Research Products
(5 results)