2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00623
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田中 ゆかり 日本大学, 文理学部, 教授 (40305503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金水 敏 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70153260)
林 直樹 日本大学, 経済学部, 講師 (70707869)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヴァーチャル方言 / 方言コンテンツ / 言語意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、言語社会を捉え直す新しい視点を提供するヴァーチャル方言研究のさらなる展開を目指すものである。ヴァーチャル方言とは、リアルな素のことばを資源とするものであるが、それに何らかの水準で編集・加工が施された仮想言語のことである。このうちポピュラーカルチャーにおいて再提示されるものは、「らしさ」と結びついたステレオタイプ度の高いものが多く、それらは当該言語社会における言語意識を色濃く反映するものである。これら仮想言語の実態や成立背景・変遷をたどることにより、言語社会のありようとその変化を新たに捉え直すことが可能となる。 本課題では、①ポピュラーカルチャーにおける実態と相互作用、②言語社会構成員の言語行動と言語意識の両面からヴァーチャル方言研究の深化とさらなる展開を目指す。同時にポピュラーカルチャー研究と言語研究の接点、日本語以外の言語社会との対照研究といった新たな研究課題創出の手がかりを探ることを目的とする。 2018年度の主要な研究成果として、研究分担者・研究協力者らを含む共編著『時代劇・歴史ドラマは台詞で決まる!』(田中ゆかり・金水敏・児玉竜一編、吉川邦夫・大森洋平共著、林直樹編集協力、笠間書院、2018年)として刊行した。併せて研究成果を「Web版! 読み解き方言キャラ」として全12回Webマガジン「Lingua」(研究社)に連載し、公開した。連載のうち3回は研究分担者の金水敏による「役割語トークライブ!」との共催で成果と課題についての対談を掲載した。この他、ヴァーチャル方言研究の枠組みについて、隣接領域の役割語やキャラ助詞・キャラコピュラなどとの関係性などを整理した学術論文なども本研究課題の成果として公開した。これらの成果公開を通じ、本研究課題における問題点を改めて整理し、期間中の研究計画と課題を再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定をしていた通り、方言コンテンツの収集・分析ならびに平行した成果公開が進んでいるため。分担研究者・研究協力者とは研究成果のひとつであるブックレット刊行を通じ、より深い協力体制が築けた。同時にその作業を通じ、収集・分析すべきコンテンツ類や今後の研究課題も明確化した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、方言コンテンツの収集と分析を進める。併せて、人を対象とした方言と共通語についての言語意識調査や、日本語社会における記憶に残る方言コンテンツ類についてのWeb調査を企画・実施したい。異なる言語社会間の対照研究について、国内外外の研究分担者・共同研究者と連携をとりつつ、国際的なワークショップ、シンポジウムなどの開催を目指したい。コンテンツ類の受容のあり方という観点だけでなく、演劇・映像研究者や実作者からも知見を得る機会を設け、制作側の意識という観点も導入したい。
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Causes of Carryover |
主に、本研究課題代表者が申請時には未確定であった2年度目の海外拠点での研究・教育の機会が初年度中途において認められたためである。海外拠点滞在中に、国内外のメンバーによるワークショップやシンポジウムを実施することを見込み、初年度の支出を抑え、2年度以降の研究のために保留したことによる。
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Research Products
(12 results)