2019 Fiscal Year Research-status Report
ミニマリスト・プログラムにおける関係節と比較節の研究
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18K00635
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
戸澤 隆広 北見工業大学, 工学部, 准教授 (70568443)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生成文法 / 英語 / ラベル付けアルゴリズム / 関係節 / 比較節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生成文法理論の枠組みで、関係節と比較節に統一的分析を試みることで、句範疇が移動先でラベルになる仕組みを解明する。 2019年度前半は不定詞関係節の内部構造の解明に向けての基礎研究を行った。具体的には、(1)データ収集、(2)主要文献の精読、(3)統語特性の調査、以上の3点に従事した。(1)については、コーパス、英字新聞、英語母語話者の容認性判断などからデータを収集し、それらを現象ごと(束縛現象、熟語など)に分類した。(2)に関して、Emonds(1984)、Bhatt(1999)を精読し、不定詞関係節の統語論と意味論の理解を深めた。(3)に関して、不定詞関係節の先行詞は不定名詞句の傾向があることが分かった。 2019年度後半は理論研究を行った。具体的には(1)理論仮説の構築と検証、(2)Late Mergeの理論的問題の検討、以上の2点である。(1)に関して、フェーズ不可侵条件がラベル付けアルゴリズムに関与するという仮説を立て、その検証を行うために不定詞関係節と縮約関係節のデータを用いた。不定詞関係節においては、当該仮説が概ね妥当であることが分かったが、縮約関係節においては反例が見つかった。そのため、仮説の代案を検討した。(2)について、Chomsky, Gallego, and Ott(2019)は、新たな併合理論を提示し、Late Mergeを文法操作から破棄している。本研究では、理論的観点から、関係節のLate Mergeの有効性を検討した。 ここまでの研究の成果を第12回北海道理論言語学研究会で研究発表した(タイトルはOn the Derivation of Relative Clauses and the Theory of MERGE)。本発表では、関係節のLate MERGEが文法操作として有効であると主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は前年度の基礎研究を継続するとともに、理論研究を行った。2019年度の目標は(1)不定詞関係節の統語特性の把握、(2)理論仮説の構築と検証、以上の2点であった。 (1)に関して、不定詞関係節のデータ観察により、(i)先行詞は不定名詞句の傾向があること、(ii)先行詞の名詞句を選択する動詞に制限があること、(iii)熟語の一部を関係節化できること、(iv)関係代名詞が基本的に非顕在的でなくてはならないこと、(v)関係代名詞が顕在的である場合、前置詞を随伴する必要があること、などが分かった。 (2)に関して、フェーズ不可侵条件がラベル付けアルゴリズムに関わるという考えに基づき、句範疇であってもそれがフェーズであれば移動先でラベルになれるという仮説を立てた。この仮説の検証において、関係節のデータを用いた。本仮説では、-ing型縮約関係節の積み重ねは非文と予測するが、事実として文法的であることが分かった。この事実は本仮説にとって強い反例となるため、仮説の代案を検討するに至った。代案の一つは、句範疇が移動した後にその主要部がさらに移動することである。これは前年度から追求していた可能性であり、今後さらにこの仮説を検討する必要がある。 以上のように今年度は仮説の修正を行ったが、これは予測の範囲内であり、研究の推進に大きく影響することはなかった。また、2019年度の目標(1)と(2)はほぼ達成できたと思われれる。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、これまでの研究過程を踏まえ、理論研究と分析の拡張を行う。具体的には、(1)理論仮説の検証を行う、(2)仮説の帰結を探求する、(3)本研究の分析を「the 最上級 that」型関係節に拡張する、以上の三点である。 (1)について、関係節と比較節において、当該仮説(句範疇が移動した後、その主要部がさらに移動し、ラベルになる)から予測される統語特性を列挙し、その予測が正しいか確かめる。必要に応じて仮説を修正し、精緻化を行う。 (2)について、当該仮説がChomsky(2013,2015)のラベル付けアルゴリズムにどのような帰結をもたらすのか検討する。 (3)に関して、「the 最上級 that」型関係節の統語特性を調査し、「the 名詞 that」型関係節との統語的共通点と相違点を明らかにする。また、本分析が当該の関係節に拡張できるか検討する。 ここまでの研究成果を学会、研究会、学会誌で発表することで、研究者からフィードバックをいただく。フィードバックに基づき、論文を改訂する。
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Research Products
(1 results)