2020 Fiscal Year Research-status Report
関連性理論に基づいたオクシモロンの解釈に関する認知的研究
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18K00638
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井門 亮 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (90334086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オクシモロン / アドホック概念 / 関連性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日・英語のオクシモロンの解釈の仕組みについて、関連性理論で提案されている「アドホック概念構築」という明意の復元にかかわる語彙解釈の推論プロセスを中心に分析を試みることにある。この研究目的を達成するため、2020年度は、研究実施計画に沿って、(1)オクシモロンと深いかかわりのある逆説法や諺との関係について、関連性理論の観点からどのように説明ができるだろうか、(2)オクシモロンの修辞的効果は関連性理論の観点からどのように説明できるだろうか、という2点について検討した。 上記の(1)について、「ありがた迷惑」「急がば回れ」「損して得取れ」など諺などによくみられる定着したオクシモロンは、Arii (1990) などでは特にDead Oxymoronと呼ばれているが、その解釈についても他のオクシモロンと同様に、井門 (2020a) で主張したようなアドホック概念構築や飽和といった明意復元のための推論プロセスが関わっているのか、または記号化された意味として解読レベルで捉えるべきか検討した。(2)については、諺で用いられるオクシモロンは、定着した表現であるにもかかわらず、同じ内容を文字通りの別の表現で言い換えた場合と比べてインパクトがあるとされる。このことは諺で用いられたオクシモロンに限らずオクシモロン全般に言えることかもしれないが、野内 (2002) などが指摘している、オクシモロンを言い換えると失われてしまう効果をどのように説明することができるのかについても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、研究実施計画に沿って、(1)オクシモロンと深いかかわりのある逆説法や諺との関係について、関連性理論の観点からどのように説明ができるだろうか、(2)オクシモロンの修辞的効果は関連性理論の観点からどのように説明できるだろうか、という2点について検討した。 (1)については、定着したオクシモロンと対になる、文学作品などで見られるような、普段の会話ではほとんど耳にすることのない創造的なオクシモロンの解釈と対比しながら検討を行った。その際には、両者は別々のタイプのオクシモロンとして捉えるべきか、または両者は創造性の程度において連続体を形成していると考えるべきだろうかという疑問を提示した。そして後者の立場から両方のオクシモロンに共通する解釈のための推論プロセスの概要をまとめることができている。(2)については、オクシモロンの持つ修辞的な効果について、関連性理論での明意・暗意の強弱、認知効果と処理コストという観点から検討を進めた。しかし、コロナの影響で十分な研究時間の確保が困難であったため、(1)については大まかな結論に達しているものの、(2)については十分な分析ができなかったことから、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に行った分析に引き続き、(1)オクシモロンと深いかかわりのある逆説法や諺との関係について、関連性理論の観点からどのように説明ができるだろうか、(2)オクシモロンの修辞的効果は関連性理論の観点からどのように説明できるだろうか、という2点について検討をしていきたいと考えている。 (1)については、創造的なオクシモロンとの対比を通して、関連性理論に基づく解釈手順に沿って関連性のある解釈を求めて推論が行われているということ、またその推論プロセスは明意の解釈に関わるものであるということを示していきたい。また、2020年度に十分な検討ができなかった(2)については、メタファーなど他のレトリックとも対比しながら、関連性理論での明意・暗意の強弱、認知効果と処理コストといった観点から検討を続けていく予定である。そして、これらの分析から得られた研究成果を国内学会の年次大会等において報告するとともに、学術論文としてまとめ、学会機関紙などの学術雑誌への投稿を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度への使用額が生じた主な理由は、調査・研究のため国内外の学会参加を予定していたが、コロナの影響で参加を検討していた学会などがオンラインでの開催となり、旅費として予算執行ができなかったためである。 2021年度の研究費については、図書費と旅費を中心に使用する予定である。図書については、引き続き関連性理論を中心とした語用論関係の書籍や、レトリック研究関係の資料を充実させて、各分野における最新の研究動向、及び先行研究を調査確するとともに、分析対象となる用例を収集するために活用する。さらに語用論だけではなく、多角的な視点から分析を行うため、本研究の隣接分野である意味論関係の書籍も充実させていく予定である。旅費については、コロナが収束し、学会などが通常通り開催されるようになっていれば、本研究に関連する学会の年次大会に出席して研究動向の調査をするとともに、これらの学会において研究発表を行って研究成果を公表し、研究者と意見交換を行なう予定である。
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