2022 Fiscal Year Research-status Report
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18K00641
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 太一 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00613275)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 構造構築 / 標示 / インターフェイス / 省略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、統語構造と音および意味のインターフェイスの観点から「標示」の存在を追及・解明し、その理論的・経験的帰結について詳細に検討することを目的とする。この目的を達成するために、今年度は、同一の「標示」を持つと考えられる構造が、異なる統語環境に生起した場合に、意味のインターフェイスにおいて異なるとみなされる場合があるか調査した。英語の様態動詞に焦点を当て、当該の動詞が経路表現を伴う構造と伴わない構造に生起可能であること、そして有生の主語を取る構造と無生物主語を取る構造に生起可能であることに注目し、これらの統語環境における動詞(の交替形)の「標示」の在り方について削除に課せられる同一性(復元可能性)の観点から考察を行った。その結果、様態動詞は、経路表現を伴い位置変化を表す場合と移動経路を伴わず位置変化を表さない場合、そして有生の行為者主語を取る場合と無生の主題主語を取る場合で、同一の動詞としてみなされ動詞句削除が可能な場合に加え、異なる動詞とみなされ動詞句削除が不可能な場合があることが示唆された。このことは様態動詞がそれが生じる統語環境に応じて複数の「標示」を与えられている可能性を示すものであり、Folli and Harley (2020)による(移動)様態動詞の分析を支持するものである。また、動詞句削除が可能な場合に関しては、異なる統語環境に生起する様態動詞が同一の「標示」を付与されていることが示唆されるため、「標示」決定の仕組みや意味のインターフェイスにおける「標示」のあり方の研究に貢献する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度前半までに、これまでに得られた研究成果の全てを発表する予定であったが、一部について再度考察し直す必要が生じた。このため、現在も論文の形で発表すべく準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果を基に、音と意味のインターフェイスにおける「標示」のあり方や「標示」がない構造の存在の可能性等を批判的に検討し、さらなる理論的・経験的帰結について考察する。
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Causes of Carryover |
今年度前半に論文として発表予定であった研究成果の一部について再度考察し直す必要が生じたため、次年度に論文を発表する際の英文校閲料として使用する予定である。
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