2019 Fiscal Year Research-status Report
コーパス言語学の新展開と中英語写本・初期近代英語印刷本に見る個人言語の変動
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18K00645
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歴史社会言語学 / 英語史 / コーパス / 初期近代英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度より本格的に開始した初期近代英語期の個人言語を扱うコーパス、SAEMEP (= Selected Authors' Writings in the Early Modern English Period) の構築をさらに進めると同時に、使用可能となったコーパスを利用して、個別領域の言語研究、特に英語の副詞の変化についての研究を行った。 より具体的には、2020年3月に公刊した "Selected Authors' Writings in the Early Modern English Period and the Historical Development of Always" において、まずその前半で、Sir Thomas More, Francis Bacon, William Cowper, John Milton, Richard Baxter, Robert Boyle, John Lockeといった個人の言語を集積したSAEMEPの構築の現状をコーパスの構造とともに公開した。 同時に後半では、副詞のalwaysが、中英語期により一般的であったalway(すなわち語尾の-sが付かない形)から副詞的属格語尾の-sを獲得する過程を経て徐々に現在のようなalwaysに発達していく様子をSAEMEPにおいて検証し、その結果を示した。初期近代英語の最初期、特にSir Thomas Moreの英語においては、all way, alway, allwey, alwayesなどのさまざまな形態が観察できる。ところがalwaysは、時代の変化とともにそのバリエーションの数を少しずつ減らしてalwaysに収束していく。本研究では、この変化の様子を明らかにすることができたと同時に、その変化のあり方が個人によって大きく異なっており、言語史研究において個人言語の分析が不可欠であることにも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、研究の基盤となるコーパスの構築を進め、SAEMEP (= Selected Authors' Writings in the Early Modern English Period)の語数が増えてきたため、より効果的に言語研究を進めることができるようになってきた。副詞のalwaysの初期近代英語期における発達を扱った論文は、パイロットスタディ的な意味合いをもつ論文ではあるが、語尾の-sが付加されて always が生じる過程を本格的に扱った先行研究は少なく、この論考自体の言語研究としての価値もある程度評価できると感じる。したがって、研究はおおむね順調に進展していると言ってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もコーパスの作成を可能な限り進めると同時に、他のコーパスを使った分析との比較にも研究領域を広げていきたいと考えている。特に2年度目は初期近代英語に焦点を当てた研究を行ったので、今後はその前後の時代を視野に入れながら、言語面でも1年度目、2年度目にとりわけ重点を置いた副詞だけではなく、その他の分野へ研究領域を広げる予定である。
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Causes of Carryover |
図書(洋書)の購入を予定していたが、年度末にかかる時期になったので、海外からの取り寄せに時間がかかることを想定し、次年度に購入することとした。
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