2021 Fiscal Year Annual Research Report
Recent trends in corpus linguistics: exploring the language of individuals in the Middle and Early Modern English periods
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18K00645
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中英語 / 初期近代英語 / 歴史社会言語学 / コーパス言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、英語史の視座から個人の言語の変動を分析するために、Early English Books Online等のデータを使用しながら中英語、初期近代英語の特定の文献を集積したコーパスを作成し、これを利用して言語分析を行った。まずは中英語期から初期近代英語期にかけての副詞の使用の拡大についての調査を行い、2020年度頃からは、綴り字など、言語の多様な側面に分析の対象を広げてきた。中英語については、写本から書き起こしたデータも利用しながら、写字生による言語変化への対応についても調査を行ってきた。 最終年度にあたる2021年度は、前年度に引き続き文献調査を行い、特にthatの複数形であるthoseの形態の変化に注目した。thoseにあたる古英語にはもともと-s音がなく、これに-sが付加されて現代英語のthoseにつながる語形が広がってくるのは中英語期の終わり頃である。2021年4月に開催された英語史研究会のシンポジウムでは「15世紀文献に見るthoからthoseへの変化」というタイトルで発表を行い、このテーマについての研究成果を報告した。その主な内容は、中英語後期のWilliam Caxtonと『パストン家書簡集』で知られるPaston家の各世代の言語使用者の英語におけるthoとthoseの揺れである。先行研究ではCaxtonの英語には-sが付加された語形が現れることが指摘されているが、thoとthoseの揺れのあり方についての詳細な研究はなされていない。本研究では、Caxtonの英語と、ロンドンよりも少し北部に位置するノーフォーク地方のPaston家の人々の英語を比較することで、thoseが北部から南下しながらロンドン地域にも拡大していく様子を明らかにするとともに、thoseの急速な拡大の背景にある言語的要因についても考察を行った。
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