2018 Fiscal Year Research-status Report
主観的事態把握から対人関係的機能の発達の多様性に関する多言語研究
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18K00647
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00263179)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 懸垂分詞 / 談話機能 / 時間メタファー / 譲歩解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では初めの2年間で、懸垂分詞由来の談話使用例のケーススタディを積み重ねることに注力することにしていた。この計画に基づいて、実際の懸垂分詞の用例における検討を、共時的データに基づいて行った。具体的には、(1)Given (that)... 、(2) Assuming... および(3)移動を表すタイプの懸垂分詞 を詳細に検討した。 (1)のGiven (that)については、他の過去分詞由来の懸垂分詞と同じく、譲歩系の解釈を途中で経ていること、また主節でのべる内容に対して与えられている前提条件としての意味合いが薄れ、単純に話題転換としての役割が見られる例が、近年増えていることを明らかにした。 (2)Assuming...については、他のSupposingやIf節などに見られる条件節とは異なった使用が目だって見受けられることを指摘した。特に、論理的な前件としての役割というよりも、後置されて、論理性からは離れた追想的な記述を付加するケースが多く見られること、さらにはAssumingを用いることで話者の「たぶん・きっとそうではないか」という強めの想定というモダリティを帯びる事例があることを明らかにした。 (3)さらに移動事態に基づく懸垂分詞については、時間メタファーと関わって談話指示的な役割を果たすようになること、また実際の移動として用いられる事例では進行方向に向けた表現しか見当たらない一方で、談話的用例にメタファー転用された事例になればなるほど時間を遡る方向の表現が見られやすくなることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画年度2年間については具体的なケーススタディを積み重ねることを目標としていた。大別して3つのケーススタディを積み重ねることができたので、数としては十分な収穫があったといえる。また本年は共時的データを中心に検討する予定であったが、その範囲での結果も得られたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はAssumingを元に、関連する仮定表現複数について検討し、その使用状況の共通性と違いについて個別に明らかにすることを通じて、条件関連の懸垂分詞の用い方の差異を検討していく予定である。さらに、今年度明らかにした3つのケーススタディについての歴史的な変遷についても同時に明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
校正チェックなどで院生のアルバイトを雇用する予定だったのが、アルバイト上限などに抵触する形でうまく都合が合わず、その分が余ってしまった。次年度に早めに依頼すること、また海外出張の旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)