2020 Fiscal Year Research-status Report
主観的事態把握から対人関係的機能の発達の多様性に関する多言語研究
Project/Area Number |
18K00647
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (00263179)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 主観性 / 主体性 / 話題化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はコロナ関連であまり進捗状況は思わしくなく、以下の成果を上げることにとどまった。 まず、現代日本語で近年よく会話その他のインフォーマルな場面で頻繁に用いられ見聞することが増えている「~ときに」表現について考察を行い、この従属的な位置づけをもつ本来であれば時間をあらわす表現が、話題化を表す使い方も同時になされていることを確認し、その変遷の可能性を探った。英語では非定形節がその発話時の話者に使用されることによって話題化に転じる傾向が強く見られるが、日本語では定形節であってもそれを仮の時制として次の話題に移ることが多いことも観察から明らかになった。この傾向については事例研究を重ねることでさらに検討していく予定である。 さらに、兼ねてから構文理論にまつわる様々な見解について幅広く調査してきた結果を『認知文法・構文文法』という共著の形で出版することができた。構文文法が生まれてきた背景やその推移、変遷、生まれてきた様々な問題について批判的な検討を加えつつ、現状と隣接分野との関連性および今後の発展の可能性を論じた。 また、上記の著作執筆の中で生まれてきた理論的なレベルでの考察も行った。構文理論で想定されるネットワークやスキーマの在り方について、下位レベル構文の重要性が指摘され、そちらが最近ではもっぱら重視されている流れにあるが、一方で上位レベル構文にもその役割と存在意義があり、とりわけ新奇表現が生まれてくる際にその力を発揮する可能性について、検討を重ねてきた。この内容については次年度である2021年に認知言語学会にて発表をする予定にしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による教育活動の負担増大に伴って生じた研究活動の停滞が大きな原因である。英語の話題化関連の分析についてはある程度のケーススタディが積み重ねられているが、特に日本語関連における分析が遅れ気味となったため、その比較検討にまで歩みを進められていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は日本語での分析を進め、日英語にてこれまでに重ねてきた考察をまとめて比較検討による結果を出したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により国内外での学会参加や学会発表出張に対する支出が皆無となってしまったため、その分の未処理残額が大幅に出てしまった。また直接会っての作業を依頼したりする人件費、謝金についても、人的交流が大幅に制限された時期が長く、思うように支出を行うことができなかった。今年度もあまり状況は改善しない模様で、旅費についての支出はおそらくほとんど計上できないことが予想される。その分、日英語の論文や論考の校閲等、研究補助のアルバイトや執筆に関わる補助に多くをあてることを考えている。
|
Research Products
(3 results)