2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00650
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉村 あき子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (40252556)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アイロニー発話 / ストーリー・アイロニー / 認知語用論 / 反対関係的偽の認識構造 / 帰属性 / 先行認識と現実認識 / 乖離的態度 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイロニーについて、現時点(2019.04.01)では「アイロニーの話者は、発話時点の話者以外の誰かに帰属される思考に対して乖離的態度を表現する」(Wilson 2009)という言語学的定義が広く受け入れられている。しかしこの定義は、Yoshimura (2013)の「帰属否定」の事例をもアイロニーだと誤って予測する一方、ギリシア悲劇等の「事の成り行き」に感じるアイロニー性(本稿ではストーリー・アイロニーと呼ぶ)を説明できない。本研究は、どのような対象にせよ、アイロニー性を認識する限りにおいては何らかの共通点があると仮定し、何が私たちにアイロニー性を認識させるのか、アイロニー性の解明を最終目標とするものである。 平成30年度は、研究の最新情報を入手する過程で、河上(2018)『アイロニーの言語学』が出版され(10/29)、その知見に示唆を得て、ストーリー・アイロニーの分析を先に行うことにした。河上(2018)は、擬態の有無、偽善型/偽悪型、意図性、同時性等の要素によって多様なアイロニー現象を分類し、アイロニーの本質は認識の「外観・先行認識と実体・現実認識の反対関係的な偽の構造」であり、本研究の言うところの「ストーリー・アイロニー」にも適用可能であると主張する。それがアイロニーの根本的特性かどうかを見極めるため、平成30年度はストーリー・アイロニーを対象にその検証作業に取り掛かった。 データ収集に時間を必要としたが、ストーリー・アイロニーの場合には、河上の言う上記の認識の「反対関係的な偽の構造」に加えて、少なくとももう一つの追加的特性が必要であることを突き止め、その明確な規定について仮説を立て現在検証中である。河上理論の「先行認識」とSperber and Wilson分析の「帰属性」は並行し、両者の比較は、アイロニー性解明に示唆的で、その全体像があきらかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の最新情報を入手する過程で、河上(2018)『アイロニーの言語学』が出版され(10/29)、その知見に示唆を得て、ストーリー・アイロニーの分析を先に進めた結果、データ収集に時間がかかったが、全てのアイロニー現象に共通する特性と、ストーリーにアイロニー性が認識される際の追加特性が必要であることが明らかになり、その特性規程の仮説を検証中であるり、順調に進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
2019年6月9日から14日に香港で開催される国際語用論学会で成果発表を行う。引き続きストーリーアイロニーが持つ特性を特定し、アイロニー発話(ことばのアイロニー)の特性規程に進んで、両者を比較することによって、アイロニー性の認識プロセスと全体像解明を進める。
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Causes of Carryover |
データ収集に思った以上に時間がかかり、予定していた規模のアンケートが年度内に実施できなかったので、更なるデータ収集とアンケート実施にかかる費用を、次年度に繰り越しました。
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Research Products
(4 results)
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[Book] 『否定の博物誌』2018
Author(s)
Laurence Horn, 河上誓作, 濱本秀樹, 吉村あき子, 加藤泰彦
Total Pages
822
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4-89476-577-1
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