2022 Fiscal Year Research-status Report
A Textual Study of the Chronicle of Robert of Gloucester
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18K00658
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
狩野 晃一 明治大学, 農学部, 専任准教授 (90735648)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロバート・オヴ・グロスター / 年代記 / 写本 / 中世 / パラレル・テクスト / 校訂版 / 初期中英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
『ロバート・オヴ・グロスターの年代記』の新たな校訂版に必要なテクストが収められている写本群の画像収集を引き続き進めている。一部図書館からの画像入手に困難があるが、長編版についてはほぼその収集が終わった。また写本画像からの転写は引き続き行っており、徐々に諸写本の転写テクストをパラレルに並べる作業を開始した。パラレル・テクストの表示方法についてはまだ試行錯誤の段階だが、基本的にはエクセルに一行ずつデータをはめ込んでいき、写本の制作年代順に各テクストを並置する方法をとっている。現在はまだオフラインではあるが、画面上でパラレル・テクストの文字列を検索したり、写本別の語彙リスト作成などの機能を付加する方向で進めている。 テクスト転写作業と並行して、本文の翻訳作業を進めている。先史時代のブリテン島におけるケルト諸部族の名称等を判別する際に、中英語のスペリングだけでは理解不能なことが多く、ジェフリー・オブ・モンマス『ブリタニア列王史』やその他初期ブリテン島のケルト人分布に関する文献などを参考にしながら同定をした。 典拠作品の同定作業は、今まで主にラテン語作品との関連で調査を行なってきたが、昨年度末からは俗語の典拠作品と関係について照合を開始した。写本間の異同を考慮に入れながら、俗語作品、とりわけ古英語で書かれた作品である『アングロ・サクソン年代記』が『ロバート・オヴ・グロスターの年代記』に取り入れられた過程を詳細に追っている。また俗語作品の取り入れ方と、中世ラテン語で書かれた年代記や編年記の取り入れ方がいかに異なるのかということも原典受容の観点から調査し始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス対策として、ハイブリット型やオンデマンド型の授業が増え、準備や配信などに時間を取られることが多く、結果として研究時間全体が減少したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在遂行中の「パラレル・テクスト作成」「本文の翻訳」「典拠作品との関連」を速やかに進める。特にデータ・ベースとしてのパラレル・テクスト構築に力を入れる。これにより語句検索や本文異同調査が格段に容易となり、『年代記』の言語研究、典拠研究の進化が期待される。このことが可能であると考えられる理由は、【進捗状況】のところで述べた、ハイブリットやオンデマンド型の準備に相当の時間を要する新型コロナウイルス感染症対策が今年度からなくなったことに伴い、より多くの研究時間確保が可能となると予想されるからである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で海外での文献調査、国際学会発表などができなかったため、使用額に差が生じた。
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