2018 Fiscal Year Research-status Report
統語的対象物のラベル付けと線状化に関する比較統語論研究
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18K00659
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
瀧田 健介 明海大学, 外国語学部, 准教授 (50632387)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統語論 / ラベル付け / 線状化 / 文法格 / 省略現象 / 生成文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、本研究課題の中心的仮説である「線状化に基づくラベル付け仮説」をより精密化するため、統語構造の線状化に関する理論とその経験的基盤、およびラベル付け理論の展開を中心に、関連する先行研究および最新の研究成果を整理し、次年度以降の研究のための基盤づくりを行った。 具体的には、「線状化に基づくラベル付け仮説」に基づく具体的な理論的提案と、それに基づく日本語の助詞残留省略の分析をまとめた論文が国際専門誌に掲載されることが決定し、査読者からのコメントに基づいて出版のための最終版を作成した。また、その内容の一部を国立国語研究所において行われた研究発表会において報告した。 また、当該仮説に関連する現象として、「方」名詞化における名詞句内省略と動詞の態および項構造の不一致に関する研究を行い、その内容をハンガリー科学アカデミー言語学研究所において行われた国際学会第41回ヨーロッパ生成文法学会、国立国語研究所において行われた国際共同研究プロジェクト研究発表会および米国コネティカット大学言語学科50周年記念大会において発表した。また、九州工業大学の前田雅子氏との共同研究として統語的アマルガムと呼ばれる現象に関する研究を行い、その成果の一部を青山学院大学において行われた研究会において招待発表として発表した。これらはいずれも、次年度以降の研究において当該仮説に基づく経験的分析の対象としての予備的研究としての位置づけをもつものである。 また、平成30年8月27日から9月22日まで米国コネティカット大学言語学会に訪問研究員として滞在し、同学科の教員および大学院生と最新の理論言語学の動向について意見交換を行い、また自身の研究テーマについて有意義な示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的仮説である「線状化に基づくラベル付け仮説」に基づく具体的な提案とそれに基づく言語現象の分析を行い、国際専門誌への掲載が決定したことは、本研究を次年度以降さらに進めていくうえで重要な一歩となる。 また、本仮説から得られるさらなる問いである「線状化が不要な場合にラベル付けがどうなるか」という問いを追求するうえで、省略現象についての研究を並行的に進展させることは重要であり、その点で「方」名詞化における名詞句内省略に関して一定の研究成果を得たこと、および統語的アマルガムに関する予備的研究に着手できたことは意義があることである。 また、米国コネティカット大学言語学科への訪問を通じて、理論言語学における最新の動向および比較統語論において精力的に研究が進められている課題に関する知見を得られたことで、次年度以降の研究の方向性に関しても有意義な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、「線状化に基づくラベル付け仮説」に基づいて提案した内容のさらなる理論的精緻化を図りつつ、この提案が経験的にも支持されるよう研究を進める。 特に、省略現象に関して平成30年度に着手した統語的アマルガムに関する研究を進め、また、新たな研究トピックとして現在検討中の形容詞句を残余部とするスルーシングに関する分析を推進する。 また、平成30年度に引き続き米国コネティカット大学言語学科を訪問することで、これまでに構築してきた研究に関する協力体制を強化し、さらに強固な研究者ネットワークの構築を目指す。 さらに、研究成果を国内外の学会・研究会において発表するとともに、論文あるいは書籍として出版することで、より幅広く研究成果に対するフィードバックを求めることを目指す。
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Research Products
(6 results)