2018 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ手話の韻律的特性と意味用法の関係性:目と眉の動きに焦点を当てた実証研究
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18K00664
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田頭 未希 東海大学, 国際教育センター, 准教授 (50408019)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 韻律 / アメリカ手話 / 非手指動作 / 意味用法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度、勤務校より半年間のサバティカルの研究期間が得られたため、国外の大学機関にて研究活動を行うことができた。そこで、研究計画では初年度に予定していたネイティブサイナーによる内省調査を縮小して実施し、次年度に予定していた手話談話データの分析を予定よりも早めて開始することとした。 データは、まず、サバティカル先の研究機関が所有している手話談話データ(アメリカ手話データと、比較のための日本手話データ、香港手話データ、イタリア手話データ)から取りかかり、本研究の主たる分析点である、目と眉の動きに加え、頭の動きを追加した形で分析を行った。頭の動きを追加した理由は、多言語との比較において顕著な差異がみられたためである。当初の計画にはなかったが、分析データとして日本手話をはじめ複数の異なる手話言語を観察できたことで、様々な言語の非手指動作を同時に分析することができ、アメリカ手話との対照言語的観点が加えられたことは、本研究の幅が広がり、大変意義があったと考える。手話言語全体の共通性や、各言語特有の現象についての分析、考察を加えることができた。データアノテーションについても、複数の言語からの知見は、アノテーションの種類と数を絞ることに役立った。 3月に関連実験として、2つの新しいデータを収録した。ひとつは貸与データと同様のマテリアル、手法を用いた追加データで、目と眉の動きと関連した身体の動きを分析するためのもので、もうひとつは韻律境界でのマーカを明らかにすることを目的としたフレーズ単位のデータである。いずれも、分析を始めたところである。2018年度後半は上記のような理由から海外で研究活動を行なったため、研究成果としての実際の公表はまだ行えていないが、今年度に関連学会で報告予定である。また、2019年度より、サバティカルを過ごした国外の大学機関との共同研究という形で研究を進めることが決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国外での半年間のサバティカルの研究期間を得たことにより、当初初年度に予定していたネイティブサイナーによる内省調査を縮小することとし、その代わりに、次年度予定していた談話データ分析を前倒しで開始することにした。データの提供が得られたことと、手話音韻論を専門とする研究者と、そのデータについて、直接ディスカッションを行う機会が得られたためである。したがって、研究計画に変更は生じたが、結果的には、2018年度に前倒しで行った談話データ分析により、研究に対照分析の観点が加えられることとなり、変更の意味は大いにあったと思う。全体の研究計画自体は、若干、研究計画よりも進んでいるところもあり、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目に予定していた談話データの分析はすでに始めているため、計画通り、2019年度は談話データの分析に時間を費やしたいと思っている。当初の予定よりも、データ数が増えたため、アノテーション作業に関しては、作業効率をあげるため複数の研究支援者を雇用し、遅れがないように進める。
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Causes of Carryover |
2018年度秋より半年間、サバティカルで国外の研究機関で過ごすことになったため、当初予定していたデータ収集の予定に変更が生じ、謝金などの支払いが不要になったため、次年度に繰り越す助成金が生じてしまった。 2019年度分に繰り越し金(171087円)は、当初の計画通り、データ収集の謝礼として使用する予定である。
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