2020 Fiscal Year Research-status Report
Free-rider and Secondary Grammaticalization
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18K00665
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 ふよう 法政大学, 文学部, 教授 (10194127)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一次文法化 / 第二次文法化 / 構造変化 / フリーライダー / 定冠詞 / 不定冠詞 / 助動詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「文法化」には2種類が存在し、従来の文法化研究ではおもに「一次的文法化」、つまり内容語が、その意味を失い文法的役割が中心の機能語に変化する過程がもっぱら議論されてきたが、新しい構造が生まれるという「二次的文法化」もあることを具体例で証明することである。これは従来の構造に新しい「場所」ができることであり、この新しい「場」の存在が多くの重要な変化を英語にもたらしてきたと主張する。さらに、この二次的文法化は一次的文法化に勝るとも劣らない重要な役割を英語の統語変化において果たしてきていることを主張するものである。またその影響は言語習得にも及ぶ。 英語が古英語から大きく変化して現代英語に至る中で冠詞の義務化は、第二言語として英語を習得しようとするものにとっては、習得困難の1つの原因となっている。これは、学習者は意味の側面から冠詞の存在を理解しようとする傾向にあるが、現代英語の冠詞は必ずしも意味ときれいには対応しておらず、統語的必要物であり、特に不定冠詞の存在は意味的だけでは理解が難しいものがあるが、不定冠詞は二次的文法化の産物であり必ずしも意味的必要物ではないことが起因している。 名詞句に新たなDという場所ができたことで、冠詞が義務的な存在となったように、古英語では一般動詞でしかなかった現代の助動詞の先祖形は、動詞句の上に新たに時制(tense)を中心とする句が生まれたことで、助動詞というクラスに変化することができた。現代英語において助動詞がいかに重要な存在であるかは、ひろく受け入れられているがここにも一次的文法化と二次的文法化の二段階の文法化が存在していると考えられる。法の助動詞は数も多いが、今のようなあり方になる時期はそれぞればらばらである。この時間差が何よりの証拠であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れているというのは研究全般への判断ではなく、おおむね、順調に進行していると考えられる部分もあり、今までの研究でかなり成果があがっていることをこれまで報告してきた。特に冠詞あるいはDシステムに関しては、引き続き国際的学会で発表し、構造変化という観点での文法化という分析はかなり評価され、徐々に受け入れられつつあると考えている。現代英語の不定冠詞 a/an の前身である、古英語の数詞 one ' an'、の文法化がフリーライダーの要件を定める点においても重要であることを明確にした。 ただ、名詞句や冠詞に関連した部分から発展して、さらに時制に関係した助動詞や動詞句の問題に関しては、2020年度のコロナ問題やそれに伴う大学の体制の大幅な変更にともなう業務の負担が大幅に増えた関係で、予定していたようには進まなかったという反省がある。そのような中でも、時制の問題は項構造、つまり文の主動詞が必要とする主語や目的語との関係から追究していくべきであることを明らかにし、そこには名詞がとる格の問題が絡んでくることを明らかにしたことは、多少の進展があったと評価できるものであると考えている。つまり、助動詞問題は、単に助動詞だけを扱うのでは充分ではなくて文というか、節構造そのものも考えないと精緻な分析はできないということがわかってきた。時制というのは文全体に関わる問題であり、項構造の変化というより大きな史的変化の研究に発展していく可能性がある。本研究では、文法化の枠組みで一定の結論を出すことを目指す。それは、今後の更なる研究への道筋を示すものとなろう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、名詞句や冠詞における文法化問題は、それなりの成果を上げていると考えているが、さらなる深化が可能であると思われるので、引き続き精緻化を図りたいと思う。 特に力を入れたいのが助動詞における文法化で多くの助動詞が現代英語に存在するなか、どの助動詞が牽引役で、どの助動詞がフリーライダーであるかという点を明らかにしたいと考えている。助動詞を扱うことは時制を扱うことであり、動詞句に関連してくる。ひいては節構造の問題になってくるのでかなり扱う対象が大きくなってくることが予想される。とりあえずは、助動詞の文法化におけるフリーライダーの存在を、冠詞で用いたのと同じ分析基準で同定できないかと考えている。また、不定冠詞anの競合者としての sumに当たるものが助動詞においても存在するのではないかと考えている。助動詞の場合、法の助動詞とdo助動詞 をどう分析するかが問題となってくる。現在、かなり雑駁ではあるが、do助動詞はいろいろな理由から牽引役ではなく、フリーライダーではないかと考えている。理由の1つとしては助動詞としての確立時期が遅く、また統語的働き以外に意味的役割があまりないなど、不定冠詞a/anの場合と通じるものがある。また、法の助動詞の中でも、牽引役とフリーライダーが存在すると考えている。助動詞としての確立の時期は、個々の助動詞によりかなり違いがあることはわかっている。古英語から中英語へと移行する中で、文法化の牽引役となった法動詞の存在はコーパスを使った数量的研究からある程度明らかにできるのではないかと考えている。助動詞の文法化をこうした一次的文法化、二次的文法化という観点から扱うのは前例がない独創的なものである。残りの期間でできるだけ、明確な図式を描けることを目標とする。
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Causes of Carryover |
昨年度、イギリスで開催予定だった国際学会がコロナにより、オンライン開催となり、また沖縄で開催予定だった日本英文学会が、ウエブ学会となったため、それらの学会への旅費として計上していた分が使用できなくなった。今年度は、状況の改善を見たうえではあるが、研究上必要な文献でかつリモートではアクセスできないものについては、現地に赴いてその場で閲覧することを予定している。また、現在、研究内容をまとめた論文を執筆中でそのための英文校閲費用などの支出も予定している。
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