2020 Fiscal Year Research-status Report
A Cognitive Linguistic Analysis of Discourse Logic Patterns Using Corpora of Spoken English
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18K00670
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
長谷部 陽一郎 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (90353135)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 構文文法 / 認知言語学 / 英語話し言葉コーパス / 談話結合子 / 談話論理構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は英語プレゼンテーションのコーパスと検索システムを構築するとともに、それらを用いて英語の話し言葉における談話論理構造のパターンを分析するものである。2020年度には次の成果があった。 第1に、本研究で開発しているシステムTED Corpus Search Engineを用いて、英語の法助動詞(should, may, must)に関する研究を行い、その結果を共著書籍において発表した。ここでは、現代英語の話し言葉データを用いて、法助動詞の異なる用法と主語要素の人称との関係の一端を明らかにできることを示した。 第2に、ディスコース・マーカーとして知られる表現(例:therefore, although, in fact)を中心とした談話的言語単位である談話結合子(discourse connectives)に関する博士学位論文を提出した。本論文におけるデータの多くはTED Corpus Search Engineから得たものであり、これらを用いた考察の結果として、1)談話結合子のような要素を構文文法において扱うためには、言語の主要な特徴の1つである線形性(linearity)を理論的枠組に導入する必要があること、2)個々の談話結合子の意味は必ずしも一様ではなく、一定の幅の中で文脈に応じて動的に変化すること、3)談話結合子は、聞き手の側の内容理解の効率と正確性を高める要素であると同時に、話し手の認知的負荷を軽減させる装置でもあることを明らかにした。 第3に、英語のas叙述構文と呼ばれるパターンについての分析を行った結果を研究論文で発表した。ここでは、as叙述構文について先行研究で示された分析について、異なる種類のコーパスを用いながら再検討を行い、その結果、とりわけ話し言葉コーパスを用いた調査からは、先行研究で示されたことが必ずしも当てはまらないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で目標とする英語プレゼンテーションのコーパスと検索システム(TED Corpus Search Engine)の開発に関しては、2020年度にデータの更新と機能の大幅な拡張を行い、2021年2月にその成果をインターネット上で公開した(https://yohasebe.com/tcse)。具体的な拡張内容としては、英語によるTED Talkとして公開されているデータの大部分を29の言語による翻訳データと共に本システムで検索可能にしたこと、また、検索時にデータの種別(プレゼンテーション、教育的レクチャー、複数人による談話など)を指定できるようにしたことなどが挙げられる。 しかしながら、上記の拡張にともない、前年度までに完成していた談話論理構造パターンに関する機能の仕様と実装に一部変更を加える必要が生じたため、これらの機能は現時点においては未だ試験版にとどまっている。また、2020年度に予定されていた国際学会における研究成果の発表機会が先送りとなったため、2021年度にあらためて研究発表の申し込みを行う。また、本研究で開発しているシステムでは、ドキュメンテーション(https://tcse.gitbook.io/doc/)を用意しているが、新たに追加した機能の詳細な説明については未だ十分な記述が行なわれていない。言語研究および言語教育・言語学習にとってさらに有用な資源として広く使われるよう、ドキュメンテーションを完全なものにする必要がある。 以上のように、本研究の進捗は予定に対してやや遅れている状況である。そこで、科学研究費補助金の補助事業期間について1年間の延長を申請し、その承認を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
談話論理構造パターンに関する機能の仕様と実装については、本研究課題で開発しているコーパスに含まれる話し言葉データの種別に応じた変更を加え、個々の発話がどのような談話論理構造を形作っているかにとどまらず、談話全体の目的も含めた、幅広く、かつ精緻な情報が取得可能なシステムとなるよう、研究・開発を行なっていく。 本研究の成果を示すため、国内学会および国際学会での研究発表を行なっていく。2021年度もコロナ禍のため、国内外で対面での学会開催が困難な状況が続くとみられる。しかしながら、本研究はインターネット上で言語研究や言語教育に携わるユーザーが自由に使用できるシステムの開発を中心としたものであるため、各種学会で対面形式の発表の代替として講じられるオンラインでの発表形式はかえって有利に働く可能性があると考えられる。 また、本研究で構築したコーパスと検索システムを用いた英語話し言葉の論理構造パターンに関する分析を引き続き行う。2020年度には、法助動詞、談話結合子、as叙述構文といった要素との関わりに着目した研究を実施したが、2021年度にはさらなる要素の分析により、認知言語学および構文文法の研究領域に貢献するとともに、英語話し言葉コーパスを用いた言語研究の実施方法や手順についても積極的な提案を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度には研究発表の申込を予定していた学会の開催延期が生じたことにより次年度使用額が生じた。2021年度に多くの学会はオンラインで開催されるため、参加のための旅費は生じない可能性が高いが、コーパス検索システムのさらなる開発やドキュメンテーションの充実のために必要な執行を行う予定である。
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Remarks |
(1)と(2)は開発しているコーパス検索システムとドキュメンテーション (3)は本研究の成果を含む博士学位論文(タイトル:An Integrated Approach to Discourse Connectives as Grammatical Constructions)
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