2019 Fiscal Year Research-status Report
Linguistic features in the Queen Elizabeth I's correspondence and her linguistic view of English as a national language
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18K00675
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
平 歩 四国大学, 文学部, 講師 (40761200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 剛 (向井毅) 四国大学, 文学部, 教授 (40136627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スコットランド女王メアリー一世 / ジェームズ六世 / 筆跡 / テキストマイニング / 宗教書 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者である平は、エリザベス一世が即位してから晩年までに認められた書簡17点について分析を行った。これらは、主にスコットランド女王メアリー一世とその息子ジェームズ六世へ宛てた書簡である。前年度に引き続き、画像データ(一次資料)の取得とそれらの翻訳、書簡が認められた頃の政治的背景や人間関係を踏まえつつ、言語的特徴と筆致の分析を行った。晩年は精神的に病んでいたという報告もあるが、死ぬ間際まで後継者となるジェームズに手紙を送り続け、国王としての責任感や説得力が健在であったことが書簡からは読み取れた。また、ラテン語の格言を挿入したり、比喩などの修辞技法を用いたりしながら、国王たる姿勢を示すような文言も見られた。しかしながら、その語り口には時折弱さも垣間見え、特に自身の筆跡については末筆で詫びることが習慣化している。これは、筆記速度を高めた書体を好んでいたことに加え、晩年はリウマチを患っていたことが拍車をかけた結果である。 さらに本年度は、これまでに取得してきた書簡にOCR処理を施してテキストデータへ変換し、オープンソースとなっているソフトウェアのデータマイニング機能を使って言語的特徴を抽出して視覚化した。また、形容詞を中心に感情分析も試みている。最終年度に向けて、データ整備や関連文献の調査に課題が残っているため、精度と速度を上げる必要性がある。 研究分担者の向井は、初年度に整理を行った、エリザベスが読んだと想定される宗教書一覧をもとに、本年度は女王の言語使用(統語、修辞)と宗教書(説教集)との影響関係について、小規模ながら調査を実施した。この過程で、①従来、当時の「口語体」の影響とされるDOの用い方は、説教集の修辞表現に関係する可能性があること、②「説得」の機能のために、同義句反復や並行構文の使用の点で類似点があること、などが観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析対象としている書簡のデータ処理および関連文献の調査がやや遅れている。データ処理に関しては、テキストデータ化した際に誤変換がないか、書簡が認められた当時の異綴りにも注意を払いながら目視での確認が必要であることが理由として挙げられる。データ処理の精度を上げていくことについては、専門家のアドバイスを継続的に得て改善する見込みである。加えて、関連文献については、国内では入手困難だったものも海外から取り寄せて概ね揃いつつある。 国民言語としての「英語」の確立という課題に向けて、宗教書からの言語比較アプローチを試みているが、調査分析の対象と比較観点を拡大し、観察結果の精度を高める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度に当たることから、掲げた3つの課題に向けた調査と取りまとめを加速させる必要がある。研究の進捗が遅れている点を踏まえて、確実に実施できる項目を絞り、焦点化して、研究の遂行を行いたい。 平はこれまでに蓄積してきたエリザベス一世の書簡データについて、言語的特徴と筆跡の分析を完了させ、幼少期から晩年までを概観し、直筆書簡に見られる言語的特徴の変遷を考察する。その研究成果は学会ないし学会誌で報告する予定である。日本国内の出版物で把握している限りでは、エリザベス一世の一連の書簡を日本語へ翻訳し、収録したものは未見である(ただし、大学紀要にその一部あり)。そのため、こちらも研究成果物としてまとめることを準備している。 研究分担者の向井は、「国民言語としての英語」の問いを中心に、これまでの調査を拡大して、まとめの作業を行い、公表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は、購入を予定していた書籍の納入が年度内に間に合わなかったためである。最終年度の予算は、書籍の購入と研究成果物の印刷に充てる予定である。当初はデータ収集のため英国への渡航を予定していたが、新型コロナウィルス感染症の影響により断念せざるをえないと考えている。
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