2020 Fiscal Year Research-status Report
Linguistic features in the Queen Elizabeth I's correspondence and her linguistic view of English as a national language
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18K00675
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
平 歩 九州工業大学, 教養教育院, 講師 (40761200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 剛 (向井毅) 福岡女子大学, 国際文理学部, 学長特別補佐 (40136627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 書簡 / ジェームズ六世 / スペイン無敵艦隊 / レトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウィルス感染症の流行により遠隔授業の準備・実施等に長時間を要したため、最終年度の目的としていた研究の総括に十分な時間を割くことができなかった。そのため、十分に完了していなかった昨年度の研究内容の分析および研究論文の作成に重点を置いた。具体的には、エリザベス一世(在位1558-1603)が崩御するまでの約20年間に認められたスコットランド王ジェームズ六世宛ての書簡(直筆書簡を含む)のうち17点(およびジェームズからエリザベス宛ての書簡10点)について分析を行なった。この時期は、イングランドがスペインの無敵艦隊を撃破した頃、つまりエリザベスが国防に苦心していた頃から死の直前までとなる。女性君主として大英帝国の礎を築き上げたエリザベス一世は、生涯を通して未婚であったため即位すると後継者問題がつきまとった。最終的に王位を継いだのは30歳ほど年の離れた従兄弟のスコットランド王ジェームズ六世であったが、次期国王となるべく名乗りを上げるもエリザベスから正式な指名を受けられず、イングランドの枢密院や他国の協力を得ようと画策した。考察結果として、この期間の書簡には2つの機能が見られた。つまり、他国の脅威からイングランドを守ためにスコットランドとの友好関係を維持すること、そして、譲位に向けたコミュニケーション手段としての機能である。信頼関係を軽んじるジェームズの振る舞いに対して厳しく嗜めたり、血のつながりに言及しながら優しく助言するといったレトリックについて、エリザベスの言語的特徴を象徴するデータを集めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
十分に完了していなかった昨年度の研究内容の分析および研究論文の作成にあたり、追加で必要となった文献や書簡のデータを海外から入手することが困難であったことが理由の一つである。例えば、大英図書館は長期間に及んだロンドンのロックダウンにより、資料の電子データ化サービスを中断していた(2021年4月にデータを入手)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度に当たることから、研究目的で掲げた3つの課題に向けた調査と取りまとめを行う。研究の進捗が遅れている点を踏まえて、確実に実施できる項目を絞り、焦点化して、研究の遂行を行いたい。平はこれまでに蓄積してきたエリザベス一世の書簡データについて、言語的特徴と筆跡の分析を完了させ、幼少期から晩年までを概観し、直筆書簡に見られる言語的特徴の変遷を考察する。その研究成果は学会ないし学会誌で報告する予定である。日本国内の出版物で把握している限りでは、エリザベス一世の一連の書簡を日本語へ翻訳し、収録したものは未見である(ただし、大学紀要にその一部あり)。そのため、こちらも研究成果物としてまとめることを準備している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により、当初予定していた最終年度に要する研究費を執行しなかったため。
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