2021 Fiscal Year Research-status Report
Linguistic features in the Queen Elizabeth I's correspondence and her linguistic view of English as a national language
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18K00675
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
平 歩 九州工業大学, 教養教育院, 講師 (40761200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 剛 (向井毅) 福岡女子大学, 公私立大学の部局等, 学長 (40136627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エリザベス一世 / 直筆書簡 / 否定接頭辞 / レトリック / 初期近代英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の最終年度にあたることから、これまでに得た研究データの集約と論文作成、そして、書簡の日本語訳の推敲に重点をおいて取り組んだ。 まず、研究成果としてまとめた論文についてだが、エリザベスの書簡に見られる否定接頭辞un-とin-の使用傾向は初期近代英語期の特徴とほぼ一致していた。つまり、un-はゲルマン語系の語彙に、in-はラテン語系の語彙に付加されるという傾向である。また、エリザベスは英語の言語的変化を牽引したとする先行研究を裏付ける例がun-とin-の使用においても得られたものの、生起数の少なさから確証を得る段階までには至らなかった。投稿に間に合わなかったエリザベスの英語観やレトリックに関する他2編は次年度に発表する予定である。 次に、直筆書簡の日本語訳についてだが、本年度末までに29通の翻訳を試みた。まだ文意を理解できていない部分が残っているのだが、これには情報の秘匿性という観点から、故意に人物名を明記しない、もしくは婉曲的に物事を伝えるというエリザベスの言語的特徴が関係している。当時の政治的背景や対人関係、書簡の慣習などをもう一度見直しながら翻訳の精度を上げる必要がある。 最後に、領域横断的研究として、画像分析を専門とする研究者と一緒に直筆書簡の信憑性について検討を試みた。ある書簡(1587年にエリザベスからジェームズへ送られた書簡)はエリザベス直筆の書簡として所蔵機関で登録されているものの、筆跡などから他者が書いたものではないかと推察された。そのため、大英図書館から入手した画像データを分析しようとしたものの、データ処理するには画像の解像度が低いことが判明したため、より鮮明なデータの入手が課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の流行により遠隔授業の準備・実施等に長時間を要したため、最終年度の目的としていた研究の総括に十分な時間を割くことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度に当たることから、研究目的で掲げた3つの課題に向けた調査と取りまとめを行う。研究の進捗が遅れている点を踏まえて、確実に実施できる項目を絞り、焦点化して、研究の遂行を行いたい。これまでに蓄積してきたエリザベス一世の書簡データについて、言語的特徴と筆跡の分析を完了させ、幼少期から晩年までを概観し、直筆書簡に見られる言語的特徴の変遷を考察する。その研究成果は学会ないし学会誌で報告する予定である。日本国内の出版物で把握している限りでは、エリザベス一世の一連の書簡を日本語へ翻訳し、収録したものは未見である(ただし、大学紀要にその一部あり)。そのため、こちらも研究成果物としてまとめることを準備している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、旅費など当初予定していた最終年度に要する研究費を執行しなかったため。
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