2020 Fiscal Year Research-status Report
評価者・学習者・意見文の分析に基づく評価の検証:作文の自律学習支援を目指して
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18K00680
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
伊集院 郁子 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (20436661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 和子 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (60463890)
李 在鎬 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (20450695)
野口 裕之 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 名誉教授 (60114815)
高野 愛子 大東文化大学, 外国語学部, 特任准教授 (30771159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 作文評価 / ルーブリック開発 / アカデミック・ライティング教材 / 作文チェックリスト / 日本語学習者 / 大学教員 / 作文コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語意見文の評価を左右する要因を執筆者、意見文、評価者の3つの観点から多角的に分析したうえで、日本語作文教育・学習を支援するツールを開発、提供することを目的としている。本年度の研究成果の概要は以下の通りである。 ①昨年度まで続けてきた日本語意見文の評価を左右する要因に関する研究成果を論文にまとめ、第二言語習得研究会のジャーナル『第二言語としての日本語の習得研究』で研究成果を公開した(伊集院・李・小森・野口2020)。 ②昨年度までの分析に加え、評定値1点から5点までの各意見文3編ずつに対する評価コメントの精緻な分析を行い、その結果をふまえて小論文評価用ルーブリックを開発した。ルーブリックの構成要素である「評価尺度」には本研究データの5段階評定値、「評価観点」には評価コメントから抽出したコード及びカテゴリー、「評価基準」には評価コメントの中の特徴的な記述(語や表現)を活用して作成した。 ③上記②で作成した「教員用ルーブリック」は、日本語学習者にはやや難しい日本語で記述されているため、学習者の内容理解の助けとなる英訳版も作成した。また、学習者が自分自身で小論文やレポートの改善をするための「学習者用チェックリスト」も作成した。 ④上記②で作成したルーブリックに関連し、これまでの研究成果に関する講演を行った(学習者コーパス国際シンポLCSAW5招待講演「作文コーパスの構築から評価研究へ:作文評価の普遍性と多様性を探る」)。また、講演内容を発展させ、開発したルーブリックの作成過程や成果物の特徴について、論文を執筆した(Ijuin,2020)。 ⑤これまでの作文研究及び日本語教育現場における教育実践の成果を生かし、留学生のためのアカデミックライティング教材を完成させた(伊集院郁子・髙野愛子2020『日本語を学ぶ人のためのアカデミック・ライティング講座』アスク出版)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年まで続けてきた分析(意見文30編に対する大学教員の評定値及び評価コメントの分析)をまとめ、論文として発信することができた。さらに、研究成果に関する講演や研究成果を応用した教材開発も行うことができた。 Covid-19の影響により、当初予定していた海外のノンネイティブ教員とのルーブリック評価に関する意見交換は実現できなかったが、研究分担者と試案のルーブリックを用いた評価を実施し、修正作業を繰り返してルーブリックを完成させた。 以上のとおり、海外のノンネイティブ教員が実際にルーブリックを用いてどのように評価を行うかの検証は今後の課題として残されているが、これまでの研究を整理して論文採択、作文教材出版、作文教育・学習支援のための成果物の作成(「教員用ルーブリック」、「学習者用チェックリスト」)を達成できたため、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研の最終年度に当たる今年度は、以下の①から④を行うことで当初の研究目的を達成する予定である。 ①日本国内で日本語教育に携わる大学教員を対象に、ルーブリック評価の検証を行い、必要に応じてルーブリックの調整・改善を行う。 ②日本語学習者を対象に、チェックリスト利用による効果の検証を行い、必要に応じてチェックリストの調整・改善を行う。 ③これまでの研究成果を発信し、さらに今後の研究の発展の可能性を検討するために、8月にオンライン開催されるCASTEL/Jでパネル発表を行う。 ④上記①から③を踏まえて本研究成果の公開方法を検討し、ウェブ上にプラットフォームを構築し,「日本語作文教育・学習支援ツール」(仮称)として公開する。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響により、中国の大学に出向き、海外のノンネイティブ教員とルーブリック評価に関する意見交換をすることが叶わなかったため、残額が生じた。 2021度もおそらく海外出張を実現することは難しいことが予想されるため、未使用額を出張費として利用することは想定せず、当初計画していた調査対象人数を増加する等の調整により、未使用額を有効に利用したい。具体的には、国内の大学教員に対するルーブリック評価への謝礼及び作文教育・学習支援ツール構築にかかる費用に充てることを計画している。
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Research Products
(21 results)