2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Grammatical Complexity in L2 Learners' Japanese as an Indicator of Language Proficency
Project/Area Number |
18K00690
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
堀内 仁 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (40566634)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文法的複雑さ / 書き言葉 / 第二言語発達 / プロフィシェンシー / 名詞修飾構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研プロジェクトは、日本語学習者の習熟度レベルと彼らの産出する書き言葉の「文法的複雑さ」との関係を明らかにし、日本語学習到達指標を提案することを目指している。2020年度は2019年度後半から引き続き、特に話し言葉と書き言葉に見られる文法的複雑さの違いに関して英語を母語とする日本語学習者を対象とする学習者コーパス研究を行ってきた。具体的には、2020年春に完成した国立国語研究所の日本語学習者コーパスI-JASのストーリーテリングとストーリーライティングのデータを用いて、量的・質的な研究を行った。それらの研究の成果は、学会での口頭発表、予稿集、新刊書のブックチャプターの出版を通じて公開された。当研究は主に近年のSLA分野における文法的複雑さ研究の流れを汲みながら、とりわけ米国のDouglas Biberを中心とするグループの研究手法を参考にしながら行われてきた。主な成果としては、(多く研究されている第一言語・第二言語としての英語と異なる)第二言語としての日本語においても、また(多く研究されている自然談話やアカデミックライティングとは異なる)ストーリーテリング/ライティングのような特殊なレジスターに関しても、Biberらが主張するように、話し言葉においては(名詞)句の複雑さが顕著にみられることがわかった。但し、ストーリーテリングは自然談話の場合と異なり、節の複雑さが顕著にみられず、対応するストーリーライティングの方にむしろ節の複雑さも見られた。尚、(名詞)句の複雑さは習熟度レベルに応じて発達することも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度後半にはI-JASのストーリーテリングとストーリーライティングを用いて主に名詞修飾表現を集中的に調査し、話し言葉に見られる文法的複雑さに関する研究が中心となったが、2020年度は徐々に対応する書き言葉の文法的複雑さをも含めた研究に発展させ、両者の違いを明らかにすることを目標に研究を進めてきた。ただ、Douglas Biberらの研究手法が中心で、従来のCAF研究で行われてきた言語単位の長さや従属節等の埋め込みの深さといった計量との比較が済んでいない。またBiberらの手法に基づいて、第一言語としての日本語、自然談話やアカデミックライティング等のレジスター、英語以外の母語を背景とする学習者の言語、学習者一般のレベル別の言語などの研究にまで発展させたかったが、新型コロナの影響でデータ整理の作業の人材確保ができず、それ等の研究もまだ済んでいない。更に、本科研プロジェクトのために初年度に収集した国際教養大学の日本語学習者エッセイデータを国立国語研究所の統語・意味アノテーションコーパス(NPCMJ)に搭載し、その分析結果も本科研に盛り込みたいが、その搭載作業が新型コロナの影響で滞っている。そういった意味で少々計画が遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研は本来2020年度が最終年度であったが、研究計画の変更に応じて一年の延長が認められた。2021年度は、進捗状況で述べたような研究の遅れを取り戻し、各研究を学術的な価値のある研究論文として出版し、その上で、本科研の最終目標である日本語学習到達指標を提案したい。また、進捗状況に記したNPCMJのデータ搭載作業を再開し、その作業結果としての統語分析を本研究の一部に反映させたい。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大の影響で、学会参加や出張費が必要なくなり、学生を雇用してのデータ整理作業も困難になったこと、また自身の計画変更に伴い、一年の延長を予定したことによる。次年度は、学生を雇用して、オンラインでやり取り可能なデータ整理の作業を行い、オンラインもしくは実地で行われる学会での発表することを計画している。
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Research Products
(4 results)