2018 Fiscal Year Research-status Report
日本語多読支援システムの開発:多読のための語彙レベルテストサイトの構築
Project/Area Number |
18K00694
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Research Institution | Shobi University |
Principal Investigator |
中野 てい子 尚美学園大学, その他部局等, 非常勤講師 (20635932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 多読 / e-learning / 自律学習 / 付随的語彙学習 / ラーニング・アナリティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
「JGRさくら」を使って多読を始める学習者がどのレベルから読み始めればよいかを判定する「JGR語彙レベルテスト」の開発を行っている。「JGRさくら」は日本語学習者の多読を支援するための読み物で、「JGR語彙リスト」に基づいてA~Hの8段階にレベル分けされている。この「JGRさくら」と同じ「JGR語彙リスト」を元に、試行を重ねながら全レベルの「JGR語彙レベルテスト」を作成した。電子版の「JGRさくら」を公開している「さくら多読ラボ」上において、「JGR語彙レベルテスト」を利用できるようにする。現在、テストの判定基準の妥当性を調査中である。同時に、「さくら多読ラボ」のライブラリーを充実させるべく、「JGRさくら」の作品数を増やして電子書籍化を行っている。 「さくら多読ラボ」は、国内外の日本語学習者がe-learningとして学べる多読の学習システムを目指している。一般的な授業で行われる精読とは対照的に、多読は時間と場所を選ばず、自由に読み物を選んで始めることができるからである。このサイトでは、教師の代わりとなる動画で多読という学習法を知り、自ら選んだ読み物を読み、コメントを書いて送り、他の読者のコメントを読むことができる。しかし、語彙が不足していれば、読み進めることができず、語彙は思うように増えない。「読み」の悪循環から抜け出して良い循環に入るための鍵は、速さ・楽しみ・理解のいずれかであると言われているが、速さと理解は、学習者の語彙レベルに関係するため、自分の語彙レベルに合うものを読むことが望ましい。デジタル教材配信・閲覧システムを用いて教室外の学習者の多読における読書行動を調査した結果、適切なレベルのものを読むことが、良い循環に移行するための条件の一つとなり得ることが示唆され、「JGR語彙レベルテスト」の必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「JGR語彙レベルテスト」を全レベル作成した。2019年度に試行テストを行い、レベル判定の妥当性を調査する。 「Web版JGR語彙レベルテスト」は、公開中の「さくら多読ラボ」上で利用できるようにするため、「さくら多読ラボ」の整備を行った。まず、これまで「さくら多読ラボ」は学習者用の登録項目のみであり、教材を授業で利用したい教師のための登録サイトがなかったため、教師用の登録項目を設けた。次に、2019年度より「さくら多読ラボ」のサーバーを尚美学園大学から外部のレンタルサーバーに移動するが、これに伴い、「JGRさくら」の制作に必要な「JGR語彙レベルチェッカー」を同じレンタルサーバーに移動し、より多くの日本語教師が語彙レベルチェッカーを利用して多読教材作成ができるようにするための準備を行った。さらに、新たに7つの「JGRさくら」を電子化し、2019年度に「さくら多読ラボ」のライブラリーで公開するべく、電子化作業を進めた。 語彙レベルテストの必要性を確認するため、デジタル教材配信・閲覧システムを用いて教室外の学習者の多読における読書行動を調査した。その結果、適切なレベルのものを読むことが、「読み」の良い循環に移行するための条件の一つとなり得ることが示唆された。この報告を国際学会で行った(内容がオープンアクセスできるため、雑誌論文の欄に記載した)。
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Strategy for Future Research Activity |
・「JGR語彙レベルテスト」の試行テストの結果を分析し、判定基準の妥当性を検討する。 ・CASTEL-J第8回国際大会(2019年8月, 釜山外国語大学)において、「多読を始める学習者のための語彙レベル判定テスト:試行版の構築」という題目で、試行版「Web語彙レベルテスト」と新たな「JGRさくら」の作品を発表する。 ・最終年度までに「Web版JGR語彙レベルテスト」を公開する。 ・引き続き、電子書籍で読む場合の読書行動に関する調査を行う。 ・多読を通して遭遇した語彙が定着し、学習効果が上がるよう、読み物に出現する語彙を使ったコロケーションなどのタスク練習ができる学習サイトのコンテンツを作成する。
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Causes of Carryover |
委託業者の都合により、サーバー移動とサイトの移転時期が次年度にずれたため、これらの費用を次年度に支払う。
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Remarks |
「JGR語彙レベルチェッカー」は一般公開をせず、作品制作者のみが利用できるようにする。
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