2018 Fiscal Year Research-status Report
話しことばの記憶の伝承:消滅危機言語とされる宮古島のことばの映像アーカイブ構築
Project/Area Number |
18K00695
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
藤田ラウンド 幸世 国際基督教大学, 教養学部, 客員准教授 (60383535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MAHER JohnC. 国際基督教大学, 教養学部, 特任教授 (50216256)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルティリンガリズム / バイリンガル教育 / 言語の多様性 / 消滅危機言語 / 日本の近代化の歴史 / フィールドワーク / 映像のアーカイブ / 心の原風景とアイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3つのプロジェクトを軸としている。プロジェクト1は、「映像による話しことばアーカイブ構築」、プロジェクト2は、「映像の背景を可視化するためのフィールドワーク調査」、プロジェクト3は、「子どもたちのための映像ワークショップと映像制作」である。 ①研究代表者がニュージーランドのオークランド大学で行われた第22回国際社会言語学シンポジウムの口頭発表とポスター発表で、社会言語学者たちと意見を交換し、消滅危機言語の映像記録をアーカイブ化の方向性を確かめることができた。②前科研研究からの継続である宮古島でのフィールドワークのドキュメンタリー映像(47分)が完成し、アーカイブ化のコンテンツの核を持つことができた。③国際NGOのリングアパックス・インターナショナルのアジア支部であるリングアパックス・アジアの支部長を務めるJelisava Biba Sethnaと協働により、2019年2月21日にユネスコが推奨する世界の「母語の日」の16言語のお祝いメッセージを含む映像(5分)を、また、2019年は国連が宣言した「国際先住民言語年」のための日本とタイ、日本は宮古語、タイはタイの少数民族たちの言語であるBisu, Tro, Urai Lawoc, Khmu & Patani Malayの5言語、合計6言語話者たちによる「声」と話者たちの背景の説明をつけたビデオ(11分半)を制作した。このビデオは国連のリソースとしてウェブサイトで公開した。④プロジェクト3を今年度中に始めることはできなかったが、2019年から宮古島市内の一小学校で、総合学習として1学期に1度の年間を通しての映像ワークショップを行えるように学校側から許可を得、教務主任と協働体制ができた。⑤連携研究者が言語の多様性に関わる講演や講義を日本国内で積極的に行い、日本国内の少数言語話者の言語についての考えを広めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、研究代表者の怪我、研究協力者の映像アーティストの病気により、前半は計画通りに進まなかった。以下、プロジェクトごとに進捗状況を報告する。 <プロジェクト1:映像のアーカイブの方向性の確認>2018年6月に、研究代表者がオークランド大学(NZ)で開催された第22回国際社会言語学シンポジウムで口頭発表とポスター発表を行った。ポスターでは、本科研研究のテーマであるドキュメンタリー制作と記録の蓄積の可能性を問う内容で、ニュージーランドを始めとする、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの研究者たちに興味を持ってもらい、口頭で議論をしながら多くの情報を得た。中でも、イランの少数言語で映像制作を試みようとしている若手の研究者とインドネシアの少数言語話者の当事者でもある研究者との議論から、今後のアーカイブの可能性と映像での記録の可能性の手ごたえを得た。 <プロジェクト2:フィールドワーク調査とリングアパックス・アジアとの協働>フィールドワークは藤田ラウンドが中心となり、現地の佐渡山と協働作業で行った。藤田ラウンドは2018年9月から2019年3月まで5回、宮古島に出張し、これまでの個人のインタビュィーをはじめ、学校、デイケア施設、漁業組合など現地のキーパーソンたちと顔つなぎをし、また、新たなインタビュィーを開拓した。こうしたフィールドワークの地縁を活かし、2019年1月に国際NGOのリングアパックス・インターナショナルのアジア支部であるリングアパックス・アジアの支部長を務めるJelisava Biba Sethnaと二人で8人が宮古語で語る映像記録をコーディネートした(詳しくは上記の研究実績概要を参照)。 <プロジェクト3:子どもたちのための映像ワークショップと映像制作>研究代表者と映像アーティストの二人の怪我と病気により、プロジェクト3は2019年から始めることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
<プロジェクト1>今年度はアーカイブ構築のための理論について、先行研究に当たる。まず、国内の京都大学を中心としてた映像人類学というジャンルの中でドキュメンタリーが活用されており、それをどのように公開、蓄積しているかを学ぶ。次に国外でのアーカイブをめぐる理論について調査する。 <プロジェクト2>フィールドワークに関しては、2018年度に新たな調査地に入る予定で、6島から成る宮古島市において、これまで2島内の1集落づつを調査地として比較にさらにもう1島、1集落を加えることができる見通しがたった。これにより、先行研究では宮古語のバリエーションは30-40あるといわれてきた中で、新たな調査地には若いバイリンガルも存在するため、地理的なバリエーションだけではなく、時間軸の世代間のバリエーションの比較も可能になるかもしれない。これが実現すれば、宮古語の現状と年齢別の言語使用ををさらに多面的に記述することが可能になるだろう。 <プロジェクト3>2018年に準備を整えた子ども向けの映像プロジェクトを2019年度は一学期に一度、合計3回、宮古島市内の小学校で実施する。この授業は総合学習の位置づけで、映像プロジェクトを東京から出前をするが、総合学習の枠を十二分に活かした内容とするため、小学校の教務主任を始め、担任の教員たちとの話し合いも持ちながら、アクション・リサーチとして研究・録画をする。すでに、2018年11月にまずは藤田ラウンドが小学校と打ち合わせをし、2019年には映像アーティストも同席し、正式に校長に許可を得て、また実務としての連絡係りとなってくれる教務主任の先生と3人で2019年度の詳細な計画を立てることができており、2019年2月と3月に必要な機材を予算の範囲で購入し、準備が整っている。
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Causes of Carryover |
機材購入の一部の入手に時間がかかり、3月中旬に出張を行った分が年度内で計上できなかった理由である。結果として持ち越した分は、今年度の計画ですでに決定している研究代表者、研究協力者の6月の出張分にあて、3月に購入した機材の申請も含め、研究遂行に必要な予算として使用する。
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Research Products
(16 results)