2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K00705
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅谷 奈津恵 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (90434456)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アカデミック・ライティング / ノートテイキング / 読解力 / 引用表現 / 言い換え |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語学習者、日本語を母語とする大学生の引用の習得過程を検討し、指導方法論を確立するという本研究の目的に従い、2020年度は以下のように、データ分析と研究発表及び教材開発を行った。 1. 収集済みの日本語学習者、日本人学生の作成したレポート・作文を対象に、参考文献の選択や参考文献からの表現の借用度、引用表現の使用特徴について分析を継続した。専門分野別の引用表記の違いを検討するために、学会誌論文における引用表現の分析にも取り組んだ。このうち、大学院留学生によるブックレポートの分析結果は論文としてまとめた。 2. 読解授業で実施した統合課題(ノートテーキングと作文、及び口頭説明)のデータ分析を進め、研究協力者の石井とともに、分析枠組みの検討を行った。分析結果の一部は、12月に実施された第二言語習得研究会全国大会においてポスター発表を行い、日本語教育関係者からのフィードバックを得た。その後、統合課題に関する先行研究の追加収集と検討を行い、多角的に分析を進めているところである。 3.これまでの研究成果を踏まえて、2つの留学生向け日本語授業で引用の指導実践と教材開発を行った。1つは大学院生対象の授業であり、文章ジャンルの理解不足が引用文献の選択のつまずきにつながっていることが確認されたため、その留意点を解説した教材と練習用課題を作成した。もう一つは引用文自体のインプットが乏しい学部生対象の授業で、基本的な引用の機能や表記方法、注意点を解説する補助教材を作成した。教材は授業で試用し、つまずきやすい点を記録した。引き続き、教材の改善と追加課題の作成に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はコロナ禍の影響により、当初計画していた新たな学習者データの収集を実施することができなかったが、収集済みのレポート・作文データの分析を進めるとともに、学会誌論文の引用分析に取り組んだ。オンライン形態ではあったが読解・ライティング授業の実践を継続し、教材開発を進めた。また、その成果として学会発表1件、論文発表1件を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研研究の最終年度として、以下のように日本語学習者、日本語母語話者学生の引用の習得メカニズムを検討し、指導方法の開発に取り組む。 1.前年に引き続き、日本語学習者、日本語を母語とする学生のレポート・作文データ、及び、質問紙調査の分析を行う。また、研究協力者の石井とともに実施している読解ノートと作文・口頭説明の分析にも取り組む。得られた結果と先行研究との知見を統合し、原文からの表現の借用と引用表現の使用状況、明示的引用知識との関係を検討する。 2.日本語母語話者、日本語学習者を対象とした読解及びライティングの授業実践と教材開発を継続する。前年度の授業データと文献研究の結果等をもとに、授業実施方法の改善にも取り組む。 以上の成果は研究論文としてまとめ、発表を行う予定である。また、作成教材は内容と書式を整えた上で、順次個人ウェブサイト及び大学ウェブサイトを通じて公開する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大により、共同研究者との打ち合わせや学会参加がすべてオンラインでの実施となった。また、新たな学習者データを収集することが困難となった。そのため、当初支出を予定していた旅費及び謝金等が不要となり、残額が生じた。2021年度も同様の状況が続く予定であるが、未使用分はデータ分析や教材作成の謝金にあて、研究実施の効率化を予定している。
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Research Products
(3 results)