2019 Fiscal Year Research-status Report
第二言語としての日本語の物語文における発達の普遍的・個別的特徴に関する研究
Project/Area Number |
18K00713
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
稲葉 みどり 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50273298)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 物語文 / Frog Story / テキストマイニング / 共起ネットワーク / 局所構造 / 第一言語習得 / 第二言語習得 / 言語発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の実績論文の要旨は以下の通りである。当該の研究では、萌芽期における物語文の発達過程を内容面に着目して、その特徴を考察した。対象としたのは、日本語を母語とする3歳前半と3歳後半の幼児の物語文(テキスト)で、内容面の考察は、KH Coder 3を使用したテキストマイニングにより、頻出語及び共起ネットワークを検出して行った。分析の結果、以下の点が明らかになった。3歳前半児のテキストは、絵本の様々な場面における登場人物の行動や出来事を絵描写的に言葉で描いているが、物語の主人公や登場人物・動物を中心に捉えて話しており、物語の筋書き(メインライン)に沿った多くの動詞を用いていること等から、物語文の萌芽があることが示唆された。3歳後半児のテキストは、3歳前半児と比べて発話量が爆発的に増加し、頻出動詞の数は3倍に増えた。また、場所、空間、時、位置、方向等を示す語彙が出現し、主人公等の行動に背景的な情報を付け加えていることが分かった。主人公の心理や心情を表す動詞や形容動詞も出現した。共起ネットワークの分析から、局所構造が少しずつ整ってくる段階であることが読み取れた。以上のことから、3歳児の言語発達の過程をまとめると、絵本の各場面における主人公や登場動物の行動の絵描写的な表現内容から、行動の背景となる場面についても空間的、時間的な視点から言及し、さらに、主人公の心情にも触れる兆しが見られた。これらの結果から、物語文の局所構造が構成され始めるのは3歳後半頃で、局所構造を構成する能力の発達と相まって、単語数や文法能力は増加し、物語の内容も整ってくることが示唆された。今後は、4歳以降の発達を分析し、発達過程をさらに詳しく提示することが課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは、主にCHILDESの分析プログラムであるCLANを用いた形態素分析を中心に行ってきたが、今年度はテキストマイニングという新しい手法により分析を開始したことで、新たな知見を得ることができたから。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、言語発達の初期の段階の特徴等を分析したので、今後はその次の発達段階を分析していく予定である。具体的には、物語文構成の萌芽期(3歳児)の言語発達の分析を終えたので、4歳以降も同様に分析を行う。テキストマイニングを始め、物語文(データ)の質的、量的な分析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度予定していた海外の国際学会での発表を次年度以降にしたため、海外出張旅費等の経費に差額が生じた。また、年度末に予定していた国内出張を新型コロナウイルス感染拡大のため、キャンセルせざるをえない状況になり、それを次年度にまわすことになり、経費の使い方に変更が生じたため。
|