2021 Fiscal Year Research-status Report
第二言語としての日本語の物語文における発達の普遍的・個別的特徴に関する研究
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18K00713
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
稲葉 みどり 愛知教育大学, 教育学部, 特別教授 (50273298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 物語文 / 第一言語発達 / テキストマイニング / 共起ネットワーク / Frog Story |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、3歳児から11歳児までの日本語を母語とする子どもの発話資料を基に、物語文の構成の発達過程を解明することを目的としている。当該の年度は、10歳児、11歳児の物語文に見られる発達の特徴を考察した。発話資料は、KH Coder 3(樋口, 2020)を使用してテキストマイニングにより分析した。その結果、以下の点が明らかになった。10歳児と11歳児の間では、総抽出語数、異なり語数において大きな変化は見られなかった。11歳児では心理・感情・考えを表す動詞の増加が認められた。出来事の因果関係が接続表現や動詞の活用形等の適切な言語形式で表現され、因果関係を表す能力、言語形式、物語スキーマの3つの条件が整ってきたことが示唆された。また、物語の再構成能力は、10歳児、11歳児の両方で見られ、主に二つのタイプの表現方法(逆戻り再構成・時系列再構成)が見られた。さらに、言語表現、語り方、場面の構成等において、独自性や多様性を持たせようとする工夫が見られた。この能力の萌芽は、8歳児、9歳児に見られた(稲葉, 2021)が、10歳児ではさらに物語に背景的な情報を付け加える事例、11歳児では本筋を膨らめたりする事例が現れ、少しずつ広がりがみられることが分かった。これは子どもの創造性の発達と物語を独自のものにしたいという希求による表れの一つと考えられる。そして、これは基本的な物語構成の能力が完成した後の発達の領域は、オリジナリティ表現(独自性・多様性)であるという田島(2003)の主張を支持するものである。本研究は、一つの物語の限られた年齢の範囲の分析から得られた結果なので、今後はさらに対象を広げて分析する必要がある。当該年度の学会等では、これまでの成果をまとめて、発達の流れ等に関して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究では、これまでに3歳児から11歳児までのテキストマイニングによる分析を行い、概ね順調に進んでいる。第二言語の発話資料の分析への着手が幾分遅れているが、次年度に集中的に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究では、これまでに3歳児から11歳児までのテキストマイニングによる分析を行い、第一言語習得における言語発達の特徴のいくつかの側面を明らかにした。次年度は、第二言語の発話資料の分析を行う予定である。また、第二言語習得の発達過程の考察では、第一言語習得の発達過程と比較することにより、その特徴のいくつかを明らかにすることをめざしている。分析の手法は、テキストマイニングとCLAN他を用いる予定である。それらをまとめて、研究の総括とする。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた国際学会等への参加がコロナ禍の影響で変更になったこと、感染拡大により調査研究等の出張を見合わせたこと、購入予定の物品等が半導体等の不足で入手が困難になった等の状況が発生し、次年度に予算の執行を回さざるを得なくなったため。次年度は、これらの状況を勘案しつつ、調査研究の継続、学会等のデジタルトランスフォーメーションへの対応、研究報告書作成等に予算を使用する計画である。
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