2022 Fiscal Year Research-status Report
第二言語としての日本語の物語文における発達の普遍的・個別的特徴に関する研究
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18K00713
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
稲葉 みどり 愛知教育大学, 教育学部, 名誉教授 (50273298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 物語文 / 第一言語発達 / テキストマイニング / 共起ネットワーク / Frog Story |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、3歳児から11歳児までの日本語を母語とする子どもの発話資料を基に、物語文の構成の発達過程を解明することを目的としている。当該の年度は、第一言語(日本語)の物語文の発達過程を、使用語の量的推移、物語文の内容的特徴、物語文の言語的特徴を中心に考察した。その結果、以下の点が明らかになった。使用語の量的変化の分析から、この物語では、総抽出語数、異なり語数、及び、分析の対象となる総語数、異なり語数は、3歳~5歳頃まで純増する。これは物語の局所構造の発達と相まっていると考えられる。その後は10歳頃まであまり増加せず、再び語数が増加するのは、11歳以降である。これは、局所構造と全体構造が整った後の発達の特徴として、物語をさらに面白くしようとして背景情報を付け加えたり、話を膨らめたりすることが一因と考えられる。物語文の内容的特徴の分析では、発達初期の3~4歳頃には、物語の発端、展開の前半の部分に語りの中心があり、登場人物の個々の言動、行動に言及して話を構成していることが示唆された。5歳頃になると、物語の展開の中盤の出来事に言及し、登場人物の心情なども織り込むようになることが分かった。6~7歳頃には、物語の展開からクライマックスの部分に言及し、8~9歳頃には、物語の結末まで全体を主題に沿って展開していることが示された。言語的特徴の分析からは、発達初期の登場人物等の行動の絵描写的な説明から、次第に客観的な語り文へと変化していくことが分かった。物語を牽引する登場人物等の心理・思考・感情などにも言及し、出来事の因果関係等も表現されるようになり、その後は、20歳頃に見られるような多様な言語表現による作話へと近づいていくことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究では、これまでに3歳児から11歳児までの言語分析を行い、概ね順調に進んでいる。第二言語の発話資料の分析にも着手しており、次年度にはこれを集中的に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究では、これまでに3歳児から11歳児までのテキストマイニングによる分析を行い、第一言語習得における言語発達の特徴の総括を行った。次年度は、第二言語の発話資料の分析を中心に行い、第一言語習得の発達過程と比較することにより、その特徴のいくつかを明らかにする予定である。それらをまとめて、研究全体の総括とする。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた国際学会等への参加がコロナ禍の影響で変更になったこと、感染拡大により調査研究等の出張を見合わせたこと、出張先の図書館、資料館等の入館が制限されていたこと等の状況が続いており、次年度に予算の執行を回さざるを得なくなったため。次年度は、これらの状況を勘案しつつ、調査研究の継続、学会等への参加(オンライン・オンサイト)、研究報告書作成等に予算を使用する計画である。
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