2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00728
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
高橋 朋子 近畿大学, 語学教育センター, 准教授 (30635165)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 夜間中学 / 日本語教育 / 外国人労働者 / 生活日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
夜間中学で実施されている外国人労働者に対する日本語教育について半年間の参与観察や教員、生徒へのインタビューでのデータをもとに、フレイレの識字教育や成人学習の枠組みを援用して分析を行った。その結果、夜間中学での教育は、日本語学校や予備教育でみられるような文法積み上げ式で文法に特化した日本語教育や、日本の公教育で行われている国語教育ではなく、外国人労働者が日本社会で生きていくための力を育てる学びの場となっていることが明らかになった。具体的には、①日本社会で生きていくために自らの体験を受け入れ、言語化し、発する力の育成、②日本の言語や文化だけでなく様々な国籍を持つクラスメートの多様性を受け入れる力の醸成、③夜間中学での授業や活動、友人関係を通じて世界や日本の事情に精通し、自分の立ち位置を把握することができ、その先への社会へつながろうとする力の育成などである。また学習者の内訳をみると、日本人生徒や外国人労働者だけでなく、国際結婚の外国人や中国帰国者、在日の人々などにとっても学びの場として機能していることが明らかになった。現在、夜間中学の数はいまだ少なく、全都道府県での設置は実現できていない。設置を訴えていく一方で、夜間中学の活動内容や授業実践、生徒の変容などを積極的に発表することで、夜間中学同士のネットワーク構築、情報共有が可能になると考えている。本年度は、異文化間教育学会、CAJLE(カナダ日本語教育学会)、国立国語研究所などで発表を行った、またそれらを通して、北陸および北海道の夜間中学関係者の方と参与観察中の夜間中学とをつなぐことができ、教員が現在も交流を続けている。これも研究の成果といえよう。また、現在発表でのフィードバックを得て投稿論文を執筆中である。次年度は、夜間中学の参与観察を続け、海外の移民教育機関との比較検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
参与観察していた夜間中学が閉校統合さたため開校直後からの授業観察が困難であったこと、コロナウィルスによる自粛により、国内での学会参加、学校訪問、シンポジウムの開催ができなかったこと、および海外への渡航制限により本年度に予定していた海外のアダルトスクール、コミュニティカレッジの訪問、授業観察が延期せざるを得なかったことにより、当初の調査計画の遅れとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの状況を踏まえて計画を修正する。 まず、現在休校中となっている学校が再開されたのち、再び夜間中学での参与観察を始める。また人との接触が制限されているため、延期となったインタビューも再開する。これまでに蓄積したデータの補強を行い、さらに多角的な方面(社会学、異文化間教育学など)から分析できるようにする。 次に、海外への渡航制限の状況にもよるが、北米の移民教育機関(アダルトスクールやコミュニティカレッジ)を訪問し、日本が学ぶべき先例の言語教育、社会教育についてデータを収集し、比較検討を行う。 コロナウイルスによって上述の計画の遂行が困難な場合、文献収集やオンラインによる情報収集に切り替えたいと考えており、ZOOMなどのソフトも準備中である。
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Causes of Carryover |
参与観察をしていた東大阪市の夜間中学が、行政の教育施策により別の夜間中学と統合されたため、統合先の中学の新体制のなかで開校すぐの参与観察が難しかったことが挙げられる。担当教員と相談をし、次年度から再開する予定である。またコロナウイルスにより、渡航が大きく制限され、年度末に予定していた海外での調査、参与観察がキャンセルせざるを得なくなったため、海外渡航費が大きく残ることとなった。次年度は国内の夜間中学での参与観察再開および海外での調査を行う予定であり、請求額が執行できると考えている。
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