2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00728
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
高橋 朋子 近畿大学, グローバルエデュケーションセンター, 教授 (30635165)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 夜間中学 / 外国人生徒 / 学齢を超過した外国人 / 日本語教育 / 成人教育 / 移民 / 外国人労働者 / 生きる力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の3つの成果があった。 1つ目は、昨年度から行なっている夜間中学に通う外国人生徒に対する日本語教育の授業を継続観察し、さらに生徒や教員にインタビューを行ったこと、2つ目は、比較検討の対象として、参与観察している夜間中学以外の学校を複数観察したこと、3つ目は、これまでのデータを元に複数の論考を執筆したことである。 1つ目に関して言えば、定期的かつ継続的な観察が順調にできた。日本語の授業だけでなく、民族の授業や行事などにも参加し、多角的な視点で学校を捉えることができたことがあげられる。得られたデータについては3つ目で述べる論考や発表、研究会などで積極的な発信を行なった。 2つ目は、北海道および東京において公立夜間中学の観察を行なった。昨年までコロナ禍のため、外部者の立ち入りが制限され、ほかの地方の中学について知る機会がほとんどなかったことを思えば、大きな成果であった。外国人生徒の状況、生徒の内訳、就業年数、日本語教育の捉え方など、いろいろな面でその共通性と差異を知ることができた。どこの教育がいいという是非を問うものではなく、多様な人々を受け入れる夜間中学だからこそ、多様な方法があることに気づく機会となった。 3つ目は、参与観察のデータをベースに、学会誌に2本、英語の書籍として1本の論考を執筆することができた。さらに、観察中の夜間中学において、これまでの参与観察をもとに、教員対象の研修会を行い、当該中学が抱える課題を討論することができた。昨年に比べ、より積極的に研究活動を行うことができた。次年度に活かしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により研究活動が大きく制限された昨年までに比べ、本年度は参与観察や他校訪問、生徒へのインタビューなどを行うことができた。また、授業だけでなく、夜間中学の行事や学会や研究会のイベントにも参加できたことは非常に意義深い。これにより遅れていた研究活動を再開し、継続することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度に当たるため、研究総括を行う予定である。活動内容は以下の3つである。 1つは、海外の夜間中学との比較である。具体的にはアメリカ、カリフォルニアのAdult Vocational School を検討している。夜間中学の目的や授業運営、現地語の捉え方や生徒の属性などについて比較したい。移民大国アメリカの成人移民教育からの示唆が期待できる。2つ目は、これまでの日本のデータに1に述べた海外のデータを加え、日本の夜間中学が目指す方向性や展望を再考したい。3つ目は、その考察を積極的に発信する予定である。夏のオーストラリア、アメリカの学会、日本の学会誌、大学の紀要を計画している。 対外的な発信だけでなく、最終的には観察を行なった夜間中学に本研究の結果を返すことで、日本の夜間中学の意義や可能性について貢献したいと考える。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた海外調査がコロナ禍により遂行できなかったこと、発表を予定していた学会がコロナ禍によりオンライン開催に変更されたことにより、海外出張費および学会参加費が発生しなかったことによる。次年度の海外調査に充てる予定である。
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