2020 Fiscal Year Research-status Report
聴覚性プライミング効果の英語プロソディー発音学習への応用: 最適な学習条件の解明
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18K00765
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
杉浦 香織 立命館大学, 理工学部, 准教授 (50515921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 智子 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (00269789)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リズムの反復 / 音声学習 / 暗示的学習 / 日本人英語学習者 / 音声分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は(2)発音項目の提示方法(リズム音)に焦点をおいた実験の追加分析を行った。
本実験では、リズム音に続いてリズム音とリズム型が一致する短い文を即時復唱する短期間(10分)の発音学習により、リズムの発音だけでなく、リズム以外の発音にも効果があるかどうか検証した。日本人英語母語話者20名 (CEFRA2)には、プレ・ポストテストでは音声提示された文(例 We keep a cat.)を即時復唱、トレーニングでは、音声提示されたリズム音の復唱後、続いて文を即時復唱、または、リズムのない音声を復唱後、文を即時復唱してもらった。分析対象の発音には①リズム、②発話速度、③ピッチ幅、④緊張母音と弛緩母音の母音長コントラストを含めた。音声分析の結果、リズムの発音のみならずリズム以外の発音にも偶発的に学習が及ぶ傾向が見られた。さらに、英語習熟度下位群では、超分節音(発話速度とピッチ幅)の面で学習効果を得る傾向があった。一方で上位群では母音長コントラストで有意な学習効果が確認された。下位群は音声的に卓越している発音でより効果的であることが窺えた。さらに、成人学習者において第二言語習得の程度に影響を与える個人差要因についても検討した。その結果、リズム能力、ワーキングメモリ容量、英語習熟度のうち、ワーキングメモリ容量がリズム(長さ)の発音学習の予測に最も大きな影響を与えることがわかった。つまり、リズム音を先行して復唱する発音学習は、短期記憶力の高い学習者にとってより効果的であることが示唆された。
第二言語学習・習得の先行研究では明示的学習に関するものが多い。しかし、第二言語学習も第一言語同様、その大部分が暗示的学習に依存していることから、暗示的学習の視点からの、第二言語学習の認知的メカニズムの解明と音声教育への示唆は、意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本人英語学習者を対象とした発音学習教材の開発を目指して、聴覚性プライミング効果(暗示的学習)による学習で、プロソディーや分節音の発音を向上させることができるかを検討している。4年間で(1)発音項目(2)発音項目の提示方法(3)学習方法(4)学習間隔の検討を行う計画である。
2020年度(3年目)は、2年目に続き、(1)発音項目、(2)発音項目の提示方法(リズム音を用いた発音学習の効果)について取り組んだ。 年度前半では、(2)に関係して、先行するリズム音と後続文のリズム型が一致する場合と一致しない場合では、一致する場合に後続文におけるプロソディー面の発音が向上するかどうかを検討した実験の論文 “How Repeating Rhythmic Beats Enhance L2 Prosody”を執筆、投稿を中心に行った。年度後半では、前述した実験をもとに練習回数や分析発音項目を変えて行った新たな実験(一部成果は口頭発表済み)の追加分析を行うとともに、これまでの研究成果を踏まえ、「リズムの復唱による第二言語音声学習」に関してフォーラム(パネリスト)で発表した。
以上、論文出版とフォーラムでの発表など一定の成果を出すことはできた。しかし、予定していた論文執筆と次期の実験(3)学習方法(暗示的発音学習と明示的発音学習の比較)については、コロナ禍で新たな業務が急増したことにより、計画度通り進めることができていない。また、2019年後半から約半年間、研究代表者の予期せぬ病気による体調不良のため、研究を計画通りに遂行できなかった。それにより、研究全体としてやや遅れをとっている。しかしながら、ニューノーマルでの業務についても慣れつつあり、また、現在は体調も回復している。よって、本年度は問題なく研究を遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したように、本研究課題では、日本人英語学習者を対象とした音声学習教材の開発を目指して、 暗示的学習による学習で、どのような発音項目において、どのような方法で学習すれば、どの程度プロソディーや分節音の発音を向上させることができるかを検討している。 4年間で(1)発音項目(ピッチ、イントネーション、リズム、 発話速度、母音など)(2)発音項目の提示方法(リズム音、提示速度の要因の影響)(3)学習方法(暗示的学習と明示的学習の比較)(4)学習間隔(分散学習と集中学習の比較)の検討を行う計画である。
本研究課題は4年計画であり、その4年目である2021年度の前半は ①計画の(2)発音項目の提示方法にあたる「リズム音の反復による発音学習(プロソディーと分節音)の効果」に関する論文執筆・投稿を行う。また、②計画の(3)にあたる「学習方法:暗示的学習と明示的学習の比較・検討」のための予備実験を行い、年度後半に実施予定の本実験にスムーズにつなげたい。なお、COVID-19の影響により、対面を伴う実験実施が難しい場合は、オンラインによる実験を実施する。
なお、研究期間中の予期せぬ病気により、研究を一時中断することを余儀なくされたため、研究がやや遅れている。研究を計画通り遂行するために、補助事業期間の延長を希望する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会発表にかかる旅費が不要であった。また、研究の遅れにより、論文投稿に伴う英文校閲料を計画通り使用できなかった。
次年度の使用計画は下記の通りである。 2021年度(使用予定額: 代表者700千円/分担者200千円、合計900千円)英文校閲料 (200千円)、 学会誌投稿料(50千円)、音声実験用の材料作成のための英語ナレーション収録料(50千円)、消耗品費(研究関連専門書籍、インクカートリッジ、心理実験ソフト、パーソナルコンピューター(MacBook Pro)(400千円)、国内・国際学会参加料(100千円)、 実験アルバイト料(100千円)。 なお、補助事業期間の延長を希望し、可能残額を延長した年度の研究活動費に充当することを計画している。
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Research Products
(2 results)