2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00771
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
杉山 香織 西南学院大学, 文学部, 准教授 (00735970)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 語彙知識 / リーディング / 読解 / 未知語 / 留学 / 経年調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2018年度は、日本語を母語とするフランス語学習者(以下、学習者)の受容語彙知識を経年的に調査するため、学習者の受容語彙知識と読解レベルの測定とデータ化を中心に行った。調査対象者は、留学に出発が決定している13名と、留学から帰国した12名の計25名である。受容語彙知識の測定の際、学習者はCEFRのA1からB1レベルに相当するテキストを読みながら、4段階のスケールで語彙知識の深さを選択した。読解レベルの測定には、受容語彙知識の測定と同じテキストを使用した。このテキストには、DELF形式のテストが付いているため、読解の理解度と語彙知識との関連を分析することを可能とする。 データ収集の一方、留学による受容語彙知識の変化を分析するため、2017年度に同方法で試験的に収集したデータと2018年度に収集したデータのうち両方の調査に参加した11名分のデータを用いて比較分析した。その結果、留学前に語彙知識が少なかった学習者に限らず、すべての学習者に語彙知識の増加が見られた。フランス語圏で生活したことにより、現地の生活や学生生活に関連する語彙や動詞の活用形に関する知識が増えた一方、未知語も多く残る結果となった。未知語の傾向として、音や形態が似ている語(ex. moyen (方法)とmoyenne(平均))、既知の形態素を組み合わせて誤った意味推測を導く語(ex. rendre(返す)とse rendre (-へ行く))、英語や和製英語からの類推を試みたものの正しい意味にたどり着けなかった語(ex.location (賃貸、リース)とlocation (ロケーション、場所))が挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集の進捗状況については、当初の計画との変更が生じたものの、おおむね順調であるといえる。本研究では当初15名を対象とし、分析する予定であったが、調査に使用したテキストの難易度が高く、タスクの量も多いため、フランス語能力がある程度保証されている学習者に絞る必要が生じた。そのため、対象者をフランス語圏へ留学する学習者と留学から帰国した者に絞った。前者は学内で派遣基準が設けられているため、レベルがある程度確保されることと、後者は留学経験によって中級レベルに達していると考えられるためである。その結果、若干名の参加者の減少となった。 分析は当初の計画以上に進展している。学習者を留学経験者に限定することで、留学によって習得しやすい語彙と、そうでない語彙の傾向を明らかにすることが可能となり、学習者全般を対象にしていた当初の計画に比べて、学習者が語彙習得時に抱えるより複雑で根本的な問題に焦点を当てることができた。つまり、日本語を母語とする学習者が、集中的な学習によって習得できる語彙とそうでない語彙の区別を一層際立たせることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度の調査に参加した後に留学した学習者を対象に、再び同様の調査を行う。その結果、今年度で試験データを含めて留学前と留学後それぞれ2年分のデータがそろうこととなる。また、2018年に分析したデータより、留学経験による語彙習得への影響の一部が解明されたため、それらについて個別の調査を行う。たとえば、留学経験によって習得された単語の傾向として、フランス語圏の日常生活や学生生活で触れる機会の多い単語や動詞の活用形が挙げられ、留学経験によっても習得が見られなかったものには、形態素や英語の影響が挙げられたが、その結果をさらに裏付けるための新たな測定を行う必要がある。 分析面では、上記の既知語と未知語の経年変化分析を進めることに加えて、読解レベルと語彙知識との関連をさらに進めていく。2018年度に行った分析では、読解レベルと語彙知識との関連が見られず、語彙知識が増えても読解の得点は上がらないという結果となった。テクストを読むには様々な能力・知識が要求されるが、語彙はその中でも特に重要な要素であることが先行研究で明らかにされているため、テキストにおける未知語の位置やテーマと未知語との関連について、さらに分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
調査に用いたテストの難易度が高かったため、当初の予定よりも参加者の人数が限定された。また、学会発表用の旅費を計上していたが、重要な校務と重なったため参加が叶わなかった。 今年度も引き続き、学会発表を積極的に行うため旅費に充てたい。
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Research Products
(5 results)