2019 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Study of History of Korean Language Education in Modern Japan: Focusing on the Concept 'Old Korean Linguistics'
Project/Area Number |
18K00782
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (90291450)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 朝鮮語教育史 / 旧朝鮮語学 / 朝鮮語 / 原物主義 / 人物史主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に「代表的人物」に準ずる「典型的人物」(新庄順貞・西村真太郎など)、「その他の人物」(松岡馨など)とその学習書を対象とする計画を立てた。研究代表者は、新たに開発した「公文書精神・公文書方法」という方法により、新庄順貞を元参謀本部朝鮮国語学生徒という人物史の側面から旧朝鮮語学に位置づける研究発表を行った。同様の方法により、松岡馨について、賊軍となった奉行の御曹司という生い立ちや数学教師といった朝鮮語と関わらなかった側面を含め、先行研究でほとんど不詳とされていた人物史を実証的かつ詳細に明らかにした上で、学習書の書誌を原物主義によって明らかにする研究発表を行い10月に投稿した。研究分担者は、代表的人物の宝迫繁勝に関する新たな発見があったため主にその研究に取り組んだ。具体的には、これまで等閑視されていた宝迫の学習書で利用された原本を明らかにする研究発表を行った。また、西洋での外国語教育を参照して旧朝鮮語学での音声認識と位置づけを明らかにする研究発表を行い10月に投稿した。これらはいずれも従来不明とされたり注目されなかった側面から旧朝鮮語学の本質を新たにかつ明確にあぶり出したものである。 この他、すでに研究した代表的人物(薬師寺知[日龍]など)・典型的人物(島井浩・弓場重栄・金島苔水など)・その他の人物(笹山章など)を類型化して旧朝鮮語学に位置づける際の視点についての試論を両研究者で検討した。 研究代表者はまた、西村真太郎に関する研究を進めているほか、簡易な語句集1冊しか確認できない武田甚太郎や、学習書は確認できない山崎英夫・住永琇三の人物史についても新たに発掘した史資料に基づき明らかにしつつある。 学習書の書誌の構築についても、従来の公共図書館に加え、一部大学図書館蔵書の原物主義による調査を行いより充実させた。 さらに、最終年度に向けて旧朝鮮語学全体の研究方針も検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度からの耐震工事の遅延により終了後の研究環境の一応の原状復帰への対処に1月までかかったため、本研究に割くべき時間をこれらに少なからず充てざるを得なかった。また、工事中はごく一部を除き、資料が箱詰め・倉庫預けの形を取らざるを得ず、資料へのアクセスが不自由になっていたことも要因の一つである。なお、その後のコロナウイルス蔓延による影響で、これらの資料の開封・再配架を行えない状況が6月初現在も継続しており、この状況は解消されていない。 同じくコロナウイルス蔓延により、第7回研究会(3月6日開催予定)が開催できなかったことに加え、2・3月に予定していた資料調査のための出張も中止せざるを得なかった。また、8月に中国で開催されたシンポジウムでの口頭発表を研究代表者・研究分担者がそれぞれ投稿した論文計2編の刊行にも遅れが見込まれる。 典型的人物・その他の人物の研究でやや遅れがあるものの、研究実績の概要欄に記載したように、代表的人物の一部の追加研究を行ったことや、典型的人物・その他の人物である程度進行中の研究もあることから、やや遅れている程度に止めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度に両研究者で共同執筆予定であった宝迫繁勝についての論文を公刊することを目指す。 また、中止せざるを得なかった研究会・出張による調査をコロナウイルス蔓延の状況が改善し、安全が確保され次第行い、計画に従い研究を行う。 引き続き、典型的人物・その他の人物についての人物史・朝鮮語観の解明を行い、順次公表する。 その上で、すでに研究を行った代表的人物・典型的人物・その他の人物をこれまで精緻化・体系化した旧朝鮮語学という概念の中で位置づけ、現代の状況をも視野に入れつつ近代日本における朝鮮語教育史の相貌を総合的に明らかにする。
|
Causes of Carryover |
現在までの進捗状況欄に記載した理由により、予定した研究会や出張による調査を中止せざるを得なかったことが主な要因である。 コロナウイルス蔓延の状況が改善し、安全が確保され次第、これらを次年度分助成金とともに執行する予定である。
|