2020 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Study of History of Korean Language Education in Modern Japan: Focusing on the Concept 'Old Korean Linguistics'
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18K00782
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (90291450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝鮮語教育史 / 旧朝鮮語学 / 朝鮮語 / 原物主義 / 人物史主義 / 朝鮮語学習書 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウイルス蔓延による状況が改善されないため、可能な方法によって、今年度の推進方策とした「典型的人物」の人物史・朝鮮語観についての研究を少しでも進めた。 まず、弓場重栄の人物史について論文を公刊した。これは、2018年度に行った口頭発表に基づくが、弓場が1917(大正6)年に朝鮮から引き揚げた日の特定と状況、『実地応用朝鮮語独学書』初版と他版との相違点など、今年度の研究で新たに判明した事実を増補した。脱稿後さらに、論文中で言及した以外の勤務先(大阪造船鉄工所・東京蔵内商事)とともに、没年(1934年)も判明した(『渋沢栄一伝記資料』別巻第四、630頁)。同論文ではまた、既発表の金島苔水の催眠術家としての胡散臭さもさらに具体的に示し、先行研究での「朝鮮語および日本語の普及者として両国の架け橋の役割を果たした人物」という評価とは相反する人物像をより実証的に示した。 この他、既発表の笹山章、研究中の村上唯吉に関する新資料を発掘した。 なお、研究代表者が2019年8月21日に第6回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムで発表し、10月31日付で投稿した論文「日本近現代朝鮮語教育史の視点から見た松岡馨と朝鮮語」が掲載予定の論文集が依然として刊行されておらず、同準備委員会に刊行見通しを2020年8月17日付のメールで照会した。その結果、9月16日付のメールで、投稿論文は採用、コロナウイルス蔓延により出版が当初の予定より遅れているが2020年内の刊行の予定、しかし、出版物の審査の厳格化によりさらに遅れる場合もある旨の回答があった。研究分担者の論文「旧朝鮮語学における音声の認識と位置付け」も同様の状態にある。 学習書の書誌の構築についても、原物主義による調査は行えなかった。そのため、既調査のノート・複写物等の再点検を行い、遺漏の補充と調査再開に備えて追調査事項の確認を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者・研究分担者間でメール等による意見交換・情報交換は随時行ったものの、コロナウイルス蔓延による状況が改善されないため、対面による研究会は開催できなかった。 また、感染を回避するために、予定した国内・国外(アメリカ・台湾・韓国等)での原物主義による調査を実施できなかった。そのため、新たな調査による研究の進捗が不可抗力によって大きく制限された。また、とりわけ前期にはオンライン教育の準備・進行や関連公務に忙殺されたことも研究遂行の妨げとなった。 今年度には、これまで準備を進めてきていた宝迫繁勝についての論文を公刊する計画であったが、研究代表者の担当する人物史、研究分担者の担当する朝鮮語観ともに原物主義による補充調査の必要があるため、脱稿には至らなかった。 このような物理的時間の確保の困難さに加え、心身の疲弊により、その他の人物についての研究や現代の朝鮮語教育との関連についての研究を含め、研究を大きく進展させることはできなかった。 しかし、研究実績の概要に挙げた事項の他、状況の制限により方法を微調整して行った以下の研究もある。(1)近年の朝鮮語教育史研究への関心の高まりによって、原物主義に基づかないお手軽な研究が現れている。本研究と根本的に異なるこのような立場の研究の最新の成果を入手・検討した。(2)薬師寺知[日龍]も登場する小説「万事オーライ!」(『大分合同新聞』・『愛媛新聞』)についても検討しつつあるが、新聞連載という形態から全体の入手には至っていない。(3)他の言語、特に漢語(中国語)・日本語教育史についての文献を収集・検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス蔓延による状況が改善され、安全が確保され次第、中止せざるを得なかった研究会・出張による調査を速やかに行う。そして、まず、宝迫繁勝の人物史と朝鮮語観についての論文の公刊を目指す。 状況が改善されない場合には、既調査済のデータとこの状況下で可能な方法を精査・検討し、まずは典型的人物、その他の人物について研究成果の公表を進めたい。 その上で、日本近代朝鮮語教育史に関わった人物を旧朝鮮語学という概念の中に位置付け、近代日本における朝鮮語教育史の様相を総合的に明らかにする。 また、韓国で刊行されている「近世および近代日本の韓国語学習資料叢書」(亦楽)所収の影印本とその解題を原物主義の立場から検討することも視野に入れている。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延による状況の改善が見られないため、予定した研究会や出張による調査を中止せざるを得なかったことが決定的な要因である。 状況が改善され、安全が確保され次第、これらを実施する予定である。 状況の改善が見られない場合には、今後の研究の推進方策に示した通り、方法を精査・検討して実施可能な形に調整しつつ研究を進行して執行する。
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