2018 Fiscal Year Research-status Report
脳科学データを利用したアクティブラーニング型ESPプログラムの開発と効果検証
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18K00788
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Research Institution | Ashikaga University |
Principal Investigator |
飛田 ルミ 足利大学, 工学部, 教授 (40364492)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NIRS / ESP / カリキュラム / アクティブラーニング / 脳科学データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、工科系及び医療福祉系大学における「仕事で英語が使える人材育成」という英語教育の最終目標に指針を得るため、教育工学・認知心理学・脳科学の知見を活用し、効果的なESPプログラムの構築を目的とした基礎的研究である。研究の手順は、ニーズ分析を実施し、仕事で役立つ英語運用能力が効果的に習得できる学習方法を検討する。このニーズ分析結果を基に、実験で扱う学習内容や教材を選定し、近赤外光脳機能イメージング装置(以下、NIRS)を活用した実験を遂行する。実験では学習中の脳内活動を観測、分析し、得られた脳科学データを基礎として効果が期待できるアクティブラーニング型のコースデザインを検討する。最終的には授業実践、効果検証、改善を重ねることにより、効果的なESPプログラムに指針を得ることを最終目標としている。 2018年度は、最終目標を達成するために設定した下位目標に順じて、調査、実験、アクティブラーニング型ESP授業実践のパイロットテストを遂行した。 ESPニーズ分析は、工科系及び医療福祉系大学生にアンケート調査を実施し、必要とされているESP関連の英語力を検討した。調査結果では、専門用語などの知識よりも、一般的な会話力の向上が求められていることが明らかとなった。この結果を受け、難易度の異なる会話教材を使用した実験を遂行し、ブレインストーミングやセルフモニタリング、学習内容の難易度と学習者の習熟度の適合が重要であることが示唆された。 これらの実験結果を参照し、双方向対話型の授業が可能であるクリッカーシステムを積極的に導入し、グループ学習やプレゼンテーションなど学習者の自律性を奨励するアクティブラーニング型の授業を実践した。その結果、学習者の授業への積極的な参加と効果確認テストにおいて多少の効果が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展していると判断した。その理由として、本研究はこれまでの先行研究の追研究であるため、研究の手順が確立しているからである。ニーズ分析に関しては、2004年度から、医療福祉系大学と工科系大学の教員と学生、及び工科系関連企業に就職した社会人を対象に、自分が所属する専門分野で特に必要だと思う英語力を調査してきた。その結果、コンピュータや映画を用いた教材を好み、日常英会話能力の向上を強く求めていること、多くの学生が英語に対して苦手意識を持っていること、教員と学生では、学習させたい英語力と学習したい英語力の認識に差異があることが判明した。これらのESP関連研究において、学習者に着目したニーズ分析の重要性が示唆されたこは、本研究で実施しているニーズ分析の有用性が裏付けされたと考えられる。そのため本研究では、調査対象、調査内容、調査手順を先行研究に順じて実施したため、調査の遂行は順調であった。 さらにNIRSを使用した実験に関しても、英語コミュニケーション能力の向上に効果的な指導方法を検討するために、2014年度から認知科学、脳科学、教育工学の知見を活かし、学習者特性と教材、課題、指導法との交互作用を検討してきた。学習中の脳活動を測定する手法は、従来の筆記試験などでは明らかにできなかった事象も解明することが可能となり、学習者の習熟度と教材や指導法の難易度を適合させることの重要性が示唆された。これらの成果を基に本研究の実験も遂行したため、特に問題はなかった。 また、効果的なアクティブラーニング型ESPプログラムの構築についても、2018年度はこれまでの成果を基に、パイロットテスト的な授業実践の効果検証を行うことにより改善点を模索することが可能であったため、おおむね順調に遂行することができたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は、2018年度の研究遂行の反省点に基づき改善を加え、調査と実験を継続する。ニーズ分析調査に関しては、2019年度に担当する工科系及び医療福祉系大学の全授業において、昨年度の調査結果を基に改良したアンケートによる調査を実施し、必要とされているESP 関連の英語力を明らかにすると共に、実験で効果検証を試みる英語学習内容を選定する。尚、調査結果が昨年度の結果と大きく異なる場合は、その差異を考慮した新たな実験計画を構築する。 NIRSを用いた実験に関しては、装置の装着などに手間がかかるため被験者数が少ないことが難点であるが、今年度は新調査の結果を踏まえた実験計画に基づき、可能な限り多くの被験者に対して、あらゆる観点から実験を遂行できるように、準備を早期から整え実験に臨む。被験者に関しては、昨年度は主に工科系の学生が中心であったが、今年度は、医療福祉系、経済・経営関係を専門とする学生にも実験協力を依頼することにより、専門の違いによる差異を検討する予定である。 上記の調査および実験遂行と同時施行で、昨年度のアクティブラーニング型指導法を導入した授業実践(パイロットテスト)の結果を踏まえて、各専門の学習者特性やニーズに適応し、効果的なストラテジー、教材開発、ESPコースデザインの構築を試行する。新しく構築したコースデザインを基礎とし、昨年度と近年度の授業実践結果の比較、及び今年度実施するアクティブラーニング型プログラムを導入する授業内における事前・事後テストの比較を行い、改善点を検討することにより、本格的なアクティブラーニング型授業を実践し効果検証を行う。 また、常に本研究分野の動向を把握するため、国内外の学会や研究会に積極的に参加して知見を得ると同時に、本研究の進捗状況に準じて国内外の学会や研究会において発表を行う。
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Research Products
(2 results)