2021 Fiscal Year Research-status Report
脳科学データを利用したアクティブラーニング型ESPプログラムの開発と効果検証
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18K00788
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Research Institution | Ashikaga University |
Principal Investigator |
飛田 ルミ 足利大学, 工学部, 教授 (40364492)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクティブラーニング / NIRS / 脳科学データ / ESP / PBL / オンライン教育 / ICT / 英語コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は高等教育機関の外国語教育で「グローバルに活躍できる人材育成」という最終目標達成に指針を得るため、ICTを駆使した効果的なESPプログラムの構築を念頭に、脳科学、認知心理学、教育工学の知見を基礎とした継続的研究である。2020年度以降は、外国語教育の多くが遠隔で実施される中で、対面授業に近い学習効果を得られるALの試行が課題となった。そこで2021年度は下位目標の「課題解決型(PBL :Project-Based Learning)ESPコースデザインにおける効果的なICT活用法の検討」を達成するために、遠隔授業においてActive Learning(AL)を試行するにあたり、オンライン会議システムを活用した同期型リアルタイム遠隔授業(RT)とLMSを利用した非同期型オンデマンド遠隔授業(OD)という、異なった遠隔授業におけるPBLの学習効果を比較検討した。具体的には、2020年度の研究成果に教育工学の知見を活かし、学習者特性、授業形態、学習態度に着目してPBLを試行した。学習者特性には習熟度やICTリテラシーを、授業形態はRTとODを、学習態度として自律的および協働的学修態度を取り上げて関連性を検討し、対面によるPBLに近い学習成果を得られる遠隔ESPプログラムの構築を目指した。 結果として、RTを試行した授業ではグループ活動やプレゼンテーションなどを積極的に取り入れることが可能であることから、学習者特性の差異に関係なく、自律的および協働的学修態度の向上にある程度の効果が見られた。ODを試行した授業においては、授業動画の複数回視聴が可能であることが、学習者特性の差異が自律的学修態度の向上に影響していたが、協働的学修態度の向上形成においては効果が見られなかった。授業形態の選択が不可能な現状下、遠隔授業形態の差異と効果的なICT活用法の検討は有用であると考慮される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、当初の予定と比較して「やや遅れている」と判断した。理由を過去の研究遂行過程と比較して示す。2019年度以前の研究経過が順調であった理由として、調査、実験、授業実践等すべての行程が対面で可能であったことから、継続的研究である本研究の基本的な遂行手順が①ニーズ分析 ②脳科学的実験の遂行と結果データの精査③コースデザイン及び試行授業の実践④授業実践⑤授業実践の結果検証と改善⑥改善点を加味した授業実践と確立されていたからである。しかし2020年度以降は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により多くの教育機関において遠隔授業を余儀なくされる中で、本研究の中枢ともいえる前述の②、③、④、⑥の行程は、2019年度以前と同様に遂行することが不可能となった。②の脳科学的実験は完了しており今後の研究遂行に影響はない。「PBL型ESPコースデザインにおける効果的なICT活用法の検討」という下位目標を達成するためには、所属機関の外国語教育の実施形態で、前期は全面OD、後期は対面+ODというハイブリッド型授業の導入という変更もあり、③、④、⑥の遂行にあたり変更を余儀なくされ、データが不十分であることは否めない。このように授業実施形態が教育機関によって異なる上、将来的には全面的に対面授業に移行された際に役立つ研究成果も十分であるとは言い難い。そのため、長期的にあらゆる授業実施形態において効果を期待できるESPプログラムの構築を目指すためには追研究が必要であると推測される。そこで所属機関において次年度の対面授業実施予定に伴い、2020年度および2021年度の遠隔授業を比較検討した成果と、2019年度以前の対面授業による研究成果を踏襲した2022年度の授業実践を経て、遠隔授業と対面授業の両者を比較検討することが必要であると判断したため、当初の予定よりやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降、高等教育機関における外国語教育の全学的な対面授業の実施が困難な状況であったことから、本研究においても当初の研究予定にはなかった、遠隔授業によるALの実施および効果検証という新たな課題が課された。遠隔授業においては効果的なICT活用が必須であることから、ESPに有用であると考慮されるPBLに着目して、RTとODという異なった遠隔授業形態において、ICT活用法と学習者特性との関連性を加味して比較検討を行った。その結果、遠隔授業であっても、ALが目指す自律的および協働的学修態度の形成においてある程度の効果が認められ、その後の研究において対面授業との比較検討を実施する予定であった。しかし、2021年度は所属機関において対面授業が実施されなかったため、前年度に予定していた対面授業におけるPBL型ESP実践と、遠隔授業におけるPBL型ESP実践の効果検証に関しては、比較のためのデータが十分であるとは言い難い。 そこで2022年度に追研究を遂行するために、研究期間の延長を申請した。追研究遂行の意義としては、遠隔授業および対面授業という授業形態の差異、および学習者特性が学習効果に与える影響を検討するにあたり、外国語の授業を2021年度には遠隔形態で受講し、2022年度は対面形態で受講した学習者のデータを比較検討することが可能であることが挙げられる。さらに、2021年度に遠隔授業受講者に実施したアンケート結果において、2022年度の授業実施形態に関して、対面ではなく遠隔の形態を望む受講者が予想以上に高かったことから、そのような受講者が2022年度に対面授業を受講した意見を、ESPプログラム構築に反映させることも有用であると考慮される。また、本研究分野の動向を把握するため、国内外の学会や研究会に積極的に参加して知見を得ると同時に、本研究の進捗状況に準じて発表を行う。
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Causes of Carryover |
前述のとおり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2021年度は所属機関で対面授業が実施されなかったため、当初の研究目標を達成するためには、対面授業実施におけるデータ収集が十分であったとは言い難い。また、2年間遠隔授業を実施した過程において、受講生が対面授業を敬遠する状況が明らかとなり、そのような受講生に対してICTを駆使した効果的なPBL型ESPコースを検討するにあたり、1年間の研究期間延長を申請し受理された。研究最終年度となった2022年は、対面での実験および授業実践が可能となったことから、必要に応じて脳科学的データの収集、他大学での実験依頼、授業実践依頼の可能性もある。その際、脳科学的実験に必要なデータを収集するための機器が老朽化したため、実験や授業実践において必要な機器類を、当初国際学会に参加するための海外出張費として申請していた費用から支出する予定である。 さらに積極的に国内外の学会や研究会において、これまでの研究成果を積極的に発表するための、参加費ならびに論文発表などにかかる費用は予定通り2022年度に支出する。
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Research Products
(1 results)