2022 Fiscal Year Research-status Report
脳科学データを利用したアクティブラーニング型ESPプログラムの開発と効果検証
Project/Area Number |
18K00788
|
Research Institution | Ashikaga University |
Principal Investigator |
飛田 ルミ 足利大学, 工学部, 教授 (40364492)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アクティブラーニング / NIRS / 脳科学データ / ESP / PBL / オンライン教育 / ICT / 英語コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は専門に特化した高等教育機関における外国語教育の最終目標:「仕事でグローバルに活躍できる人材育成」の達成を目指した、ESPプログラム開発に指針を得るための継続的研究である。過去2年間は多くの教育機関において、同期型リアルタイム遠隔授業(RT)やLMSなどを利用した非同期型オンデマンド遠隔授業(OD)のような遠隔授業が実施された。そのため、授業形態の違いを起因とした学習成果の差異に着目し、担当したRTではクループ活動やプレゼンテーションを、ODではプレゼンテーション動画作成など、実施可能なPBL活動を取り入れた。その結果、授業形態の違いによる学習成果に差異は確認できなかった。 2022年度も、脳科学データとニーズ分析から得られた成果を基に効果的なESPプログラムの構築を目指し、「課題解決型(PBL :Project-Based Learning)ESPコースデザインにおける効果的なICT活用法の検討」という下位目標に沿って研究を遂行した。具体的には、対面授業におけるPBL活動の効果検証、および遠隔授業との学習成果の比較検討を試みたが、多くの学習者が教室内での発言に抵抗があり、RTと同等の積極的な協働学習の実施は困難であった。この難点を改善するため、プレゼンテーション活動はLMSで、グループ活動はクリッカーシステムなどのICTを駆使することによりPBLを実施した。その結果、前年度のRTとODの学習成果との間に顕著な差異は確認できなかった。しかし、ICTを臨機応変に活用することにより、教員と学習者間のコミュニケーション活動は積極的に行われたが、学習者同士のコミュニケーション活動にはまだ制約があったことは否めない。このことからも、授業形態を選択できないような状況下であっても、ICTを駆使してESPの学習成果を得られる効果的なPBL活動の検討は有意義であると考慮される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究は長年にわたる継続的研究の一環であり、基本的な研究遂行手順は①ニーズ分析 ②脳科学的実験の遂行と結果データの精査③コースデザインおよび試行授業の実践④授業実践⑤授業実践の結果検証と改善⑥改善点を加味した授業実践という手法を繰り返すことにより順調に研究を進めてきた。しかしコロナ禍以降は、前記の①と②を基に設計した試行授業の実践が不可能であったことが起因となり、当初の研究計画と比較した場合遅延していると判断せざるを得ない。 2022年度は大半が対面授業へと移行したが、非同期型オンデマンド遠隔授業(OD)も混在していた。さらに、ESP教育におけるActive Learning(AL)として、同期型リアルタイム遠隔授業(RT)でProject-Based Learning (PBL)を実践していた授業がカリキュラム改編のためPBLの継続不可能となり、本研究において中核的な役割を果たすべき④~⑥の試行授業の実践と効果検証に関するデータが不足していることは否めない。 2022年度は全面遠隔授業を継続している教育機関も散見され、高等教育機関における授業方法の統一性は確認できなかった。しかし2023年度は、全面的に対面授業に移行されることが予測される。そのため、将来的にどのような障害が生じるか予測不可能な現状下で、対面、非対面など授業実施形態の差異に左右されず、学習効果が期待できるESPプログラムの構築を目指すためには追研究が必要であると推測される。これらの状況を鑑み、2020年度と2021年度の遠隔授業と2019年度以前の対面授業による研究成果、および2022年度と2023年度の対面授業の授業実践を経て、遠隔授業と対面授業の両者を比較検討することが必要であると考慮されたため、本研究は当初の研究計画と比較して「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降のコロナ禍で世界情勢が一変したことにより、教育機関においても従来の授業形態を維持することが困難となり、世界的にICTを駆使したあらゆる形態の遠隔授業が実践された。日本の高等教育機関においても、対面授業に近い授業内容を維持するために、LMSやオンライン会議システムの新規導入や活用を余儀なくされた結果、ICTの効果的な活用の重要性が再認識されたと言えるであろう。そのため本研究の最終目標である、「効果的なESPプログラムの構築」に指針を得るためには、効果的なICT活用方法の検討が最重要課題であると考慮される。 そこで2023年度の研究では、時代、世界情勢、教育現場のニーズに適合したICTの活用方法を再検討し、必要であれば新規に導入する。これまでの研究においてもニーズ分析の結果を基に、音声認識システムなどのコミュニケーション能力を高めるe-Learning教材や、近赤外線分光装置(NIRS)を活用した脳科学的データを導入して効果検証を試みた。コロナ禍の経験を経て、本研究では対面授業と遠隔授業のどちらでも効果が期待できるICTの活用方法を検討することにより、時代に適合したESPプログラムの構築を目標とする。具体的には、工科系の大学生にアンケートを実施して、受講生が興味を持ちそうなExtended Reality (XR)上でのメタバースの活用など、最新仮想空間技術の活用についてもニーズ分析を行い、その結果に基づいて導入を検討する。予測不可能な事象が起こり得る現状下で、時代や情勢のニーズに適応させたICTの効果的な活用方法を追及することは有意義であると考慮し研究期間の延長を申請し研究を継続する。また、本研究分野の動向を把握するため、国内外の学会や研究会に積極的に参加して知見を得ると同時に、本研究の進捗状況に準じて成果発表を行う。
|
Causes of Carryover |
前述のとおり、過去2年間は国際学会もオンラインで開催されるなど、当初予定していた海外出張のための費用の全額支出には至らなかった。さらに、過去2年間の授業実践では当初予定していた十分な授業分析データを収集できなかった。そこで、予測不能な事象が起こり得る現状において、時代や情勢のニーズに適応した、対面授業と遠隔授業のどちらでも効果が期待できるICTの活用方法を追及することは有意義であると考慮し、研究期間の延長を申請した。 研究最終年度となった2023年は、当初の研究目標である「効果的なESPプログラムの構築」に指針を得るため、これまで制約があって不可能であった他大学との交流も積極的に実施する予定である。その際、効果的な授業実践のために必要な教育機器やソフトウェアが新規必要であれば、それらの導入を国際学会に参加するための海外出張費として申請していた費用から支出する予定である。また、研究で得た成果を積極的に国内外の学会や研究会において発表するための参加費、ならびに論文発表などにかかる費用は予定通り2023年度に支出する。
|
Research Products
(3 results)