2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00808
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 一美 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (90435305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木津 弥佳 (田中) ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (00759037)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 項省略 / 相互代名詞 / NP構造 / 日本語母語話者 / 韓国語母語話者 / 緩やかな同一性解釈 / 厳密な同一性解釈 / マイクロパラメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語の空項を項削除(Oku, 1998; Saito, 2007)ととらえ、第二言語における数量詞、相互代名詞の解釈の習得(および喪失)の過程に関する経験的事実を整理、分析し、第二言語習得論および言語理論の発展に寄与することにある。そのため、母語に項削除を持つ言語と持たない言語の第二言語学習者を対象に、実験的手法により横断データを収集し、分析を進める。 研究の初年度である30年度は、まず日本語母語話者の項削除の解釈を把握するため、日本語母語話者を対象とする日本語の真偽値判断テストの開発を行った。また、国内外の言語学や第二言語習得に関する学会に参加し、最新の研究成果を把握するとともに、情報交換を行い、実験の立案、韓国語母語話者を対象としたインフォーマントワークを行った。 Saito (2007)では一致が存在する言語に項削除が許されることが論じられている。日本語と韓国語は非一致言語であり、項削除は両言語においてみられる現象である。このことから、項削除の解釈に関しては両言語で同じように観察されるという予測がたてられる。しかし、韓国語母語話者に対するインフォーマントワークを実施したところ、項削除の解釈に関し、日本語とは異なる部分があるという結果が得られた。この結果をふまえ、両言語の空目的語の統語ステイタス(NP構造)の違い、およびマイクロパラメターが関与している可能性という観点から、本研究では、まず日本語母語話者の日本語の空項の解釈、および韓国語母語話者の韓国語の空項の解釈について検証を進めていく。 来年度は、両言語の母語話者による空項の解釈の実験を開始する。それをもとに実験文のさらなる精緻化を図り、学習者を対象とした実験アイテムの作成および実験を開始していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、次年度以降の研究の基盤を形成するための実験実施の準備を進めることができた。日本語母語話者を対象とした実験文タイプの整理、文脈の設定、場面提示のための写真撮影、実験スライド作成がすべて完了し、実験実施が可能な段階である。韓国語母語話者対象の実験準備も進めており、すでに実験文の韓国語への翻訳作業を依頼し、被験者の募集も開始している。更に、日本語および韓国語におけるnull object constructionのnull objectの統語ステイタスについて検討を行い、今後の実験における仮説構築に向けて理論的基礎を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語母語話者および韓国語母語話者を対象に実験を開始する。この実験で得られた知見を活かし、第二言語学習者を対象としたテスト開発を進める。国内外における被験者が集まったグループから随時行う予定である。さらに、null objectの統語ステイタスに基づく仮説のもとで、得られた実験結果の分析を開始する。韓国語のように、日本語同様、項削除を許す言語であるにも関わらず、相互代名詞が省略されたnull objectの解釈が日本語とは異なる場合があり、この種の言語のnull objectに関して更なる理論的な検討が必要である。具体的には、この種の言語におけるnull objectの解釈が、日本語の相互代名詞省略とのどのような統語的な違いから生じるのか、また、どの程度の語用論的な解釈が考慮されるのかを調査する。
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Causes of Carryover |
来年度への繰越金額は175,370円である。実験のためのテスト開発を主に研究代表者のパソコンを使用して行ったこと、国内および海外におけるデータ収集の際にパソコンが必要になるがその機会が次年度以降になることから、分担者に必要な設備は次年度に購入する予定である。
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