2019 Fiscal Year Research-status Report
英語を話す意思(WTC)への刺激要因と阻害要因の調査
Project/Area Number |
18K00815
|
Research Institution | Kansai Gaidai College |
Principal Investigator |
豊田 順子 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 准教授 (40618104)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | WTC / Task based learning / 再生面接法 / WTC刺激要因 / WTC阻害要因 / 中学生英語学習者 / 英語インタラクション / 外国語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トライアンギュレーション手法を用いて、今まで全く未開拓分野であった中学生英語学習者の「英語を話す意思 (Willingness to Communicate, 以下, WTC)」という心理状態を多角的に探るものである。具体的には公立中学校の英語コミュニケーション活動時にタスクベースド学習 による介入授業を行い、「再生面接法 (stimulated recall interview)」と「授業参与観察」を用いて、英語学習者の「英語を話したい」「英語を話したくない」心理を左右する内的・外的要因を明らかにするものである。4か月にわたる調査協力者7名の再生面接と英語会話の録音データを言語データへ書きおこし、グランディッドセオリーアプローチ(Corbin, H & Strauss, A, 2015)の分析手法に従って、整理・コーディング・構造化を行った。 結果から、英語インタラクション中、調査対象者のWTCは2つのコア要因:(1)「対話者」と(2)「タスクコンディション」から刺激や阻害の影響を受けて、上下変動することが明らかとなった。(1)「対話者」が与えるWTCへの影響の具体的な内容は、①対話者の積極的なコミュニケーション姿勢(発話回数の頻度、言語・非言語を使う意味交渉、アイコンタクトなどの非言語コミュニケーション)、②対話者との英語レベルの差、③対話者との人間関係などであった。(2) 「タスクコンディション」が与えるWTCへの影響の具体的な内容は、①興味があるタスクトピック、②タスクの難易度、③タスクゴールの明示、④対話者とトピックが選択できる環境の4つであった。これらの要因が調査対象者のWTCの上昇・下降に影響を与えていたと明らかになった。結果から、学習者はWTCを維持出来たり・出来なかったりすることを指導者は十分考慮し英語実践能力の育成を目指す必要があるといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 介入研究に基づく再生面接と授業観察によるデータ収集. 研究対象の大阪府の公立中学校にて、4か月にわたり介入英語授業を行い、調査対象者7名に、「再生面接」で英語を話すときの深層心理を回想してもらい、言語データを収集した。また調査対象者の授業中の行動と言動(英語・日本語)を録画・録音することによってもデータ収集を行った。 2. データの整理とコーディング. 膨大な時間を費やし、上記で述べた「再生面接」、「授業観察」の質的データは、グランディッドセオリーアプローチ(Corbin, H & Strauss, A, 2015)の分析手法に従って、整理・コーディング・構造化を行った。質的データを担保する目的で、英語発話量の変動データを上記分析に含めた。 3. 研究成果の発表(学会発表と研究会). 研究協力者である八島智子教授が開催される研究会で数回発表し、分析方法などに関して有益なアドバイスをいただいた。アドバイスを基に修正を重ねて、3つの国際学会(American Association of Applied Linguistics, 2019 (AAAL); Language in Focus -6th International Conference 2019; 3rd International Conference on Situating Strategy in Use (SSU))で研究成果を発表した。 4. 研究成果の発表. 研究成果を論文としてまとめ上げて、応用言語学分野における著名な国際ジャーナル2誌に投稿した。国際誌投稿プロセスにおいては、一年ほどの期間を費やした。しかし、残念ながら、不採択という結果となった。現在は、国内ジャーナルに2誌に投稿中であり、結果を待っている最中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. データ分析の継続 現在までに、収集したデータを分析することにより、英語コミュニケーション活動時の中学生調査対象者のWTCに影響を与える刺激要因と阻害要因の抽出を完了した。一方、介入授業研究期間中に、調査対象者のWTCや動機付けを含む情意が変容した。特に、初級英語学習者の情意(例:外国人教員への積極的なコミュニケーション姿勢の醸成)は大きく変化した。今後は、時系列で質的データを整理し、「どのように調査対象者のWTCが向上したか?」「どのようなことがWTCの成長に影響を及ぼしたか?」を探っていくつもりである。 2. 国内外の学会で発表 前述のデータ分析完了後、国内外の学会で発表し、またジャーナルへ論文を投稿していく所存である。そして、日本の教育現場で英語によるコミュニケーションを実施する場合、どのような動機づけ育成が必要となるかを提言していく。
|
Causes of Carryover |
二年目に予定していたデータ分析をパソコンソフトなどで効率的に行えたため人件費(アルバイト代)が不要となった。また、冬季からはコロナ流行により研究活動が停止せざるを得ない状況となった。このような事情で残額が生じた。残額分を早期に得られた成果発表の用途に使いたい。具体的には、国際学会発表、論文執筆のための校閲・学会発表用旅費の支出へ当てたい。
|
Research Products
(3 results)