2018 Fiscal Year Research-status Report
プロジェクトを用いたCLILによる領域統合型英語活動の効果
Project/Area Number |
18K00838
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
村野井 仁 東北学院大学, 文学部, 教授 (20275598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内容言語統合型学習 / 異文化間能力 / 文法力 / 第二言語指導効果研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトを用いた内容言語統合型学習(content and language integrated learning/ CLIL)による領域統合型英語活動が、日本で英語を学習する大学生の総合的な英語運用能力の発達に与える効果を質的・量的に検証することを目的として2018年度から研究を開始した。初年度である2018年度は、研究の土台となる第二言語習得理論の文献研究から始めた。特に第二言語習得への認知的アプローチと社会文化的アプローチを融合の可能性と学習者を主体的・自律的社会的存在として扱う指導理念、CLILとフォーカス・オン・フォームを融合する試みに関する先行研究の分析を行った。 さらに今年度は、内容言語統合型学習を一般的な英語の授業に組み込み、その効果を検証するための予備的実験を行うことができた。この予備的実験においてはグローバル・イシュー(難民問題)を題材とした動画プレゼンテーションを題材として用い、理解活動、発表活動(情報共有)、調査活動及び発表活動(情報公開)を統合的に行うCLIL活動の効果を調査した。実験参加者は、英語を第二言語として学習する日本人大学生32名で、このような統合的CLIL活動が、学習者の異文化間能力にどのような影響を与えるのか検証した。異文化間能力は技能(語彙・文法)、知識(題材内容に関する知識)、態度(題材内容に対する姿勢)によって構成されるものと考え、それぞれを量的に測定評価するテストを構築し、事前事後法によって、CLIL活動の効果を検証した。文法に関しては運用能力を測定するために口頭文法テストの開発も行った。現在、指導効果を細かく分析しているところであるが、予備的分析結果によれば、技能、知識及び態度の全てにおいて,指導効果が確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定としていた文献研究に基づき、研究課題であるCLILに基づく領域統合型の英語活動を構築することができた。さらに第二言語習得理論に基づいて構築した領域統合型の英語活動の効果を実証的に検証する予備的実験を行うことができた。予備的実験において用いたテストは、異文化間能力の観点から開発したもので、独創的なものである。妥当性・信頼性においては開発の余地はあるものの、技能・知識・態度の3点において学習者がどのような変化を見せるのかを調査することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、まず予備的実験の結果を精査することである。現在までの分析結果では指導の効果が認められているが、量的調査に留まっているので学習者の発話の質的調査も加えながらより詳細に指導効果を検証していく必要がある。予備的実験の結果について、6月に開催されるJ-CLIL東北支部研究会において発表する(招待講演)予定である。発表内容は論文としてまとめ、2019年度中に公開する予定である。 次に本実験の研究計画を立てる予定である。予備的実験では指導は2時間と比較的短いものであったため、より継続的な指導を受けた場合の効果を検証する必要がある。本実験の規模及び実施時期については研究の進捗状況を見ながら決定する予定である。申請段階では50名程度の実験参加者を得て、継続的に指導効果を検証する予定であったが、口頭英語運用能力も測定することをめざすと実験に必要となる機器の都合上大きな困難が予測される。予備的実験では32名の実験参加者で必要な結果を得ることができたので、本実験においても同じ程度の実験参加者によって調査を行うことを検討する。申請段階では指導効果を業者が開発した問題解決力テストを用いて測定する計画であったが、指導の対象を一般的問題解決力ではなく、異文化間能力とすることの方が妥当であることが初年度の研究によって判明したため、業者テストを利用するのではなく、異文化間能力を独自に開発することに計画を変更した。この異文化間能力を測定するテストの改善が大きな課題となる。予備的実験の結果やテスト研究に関する先行研究の知見に基づき、技能・知識・態度の3観点から広く第二言語能力を測る独自のテストを開発し、より妥当性・信頼性が高いテストを開発していく予定である。
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